2009年6月8日
椅子の手前がダイニングスペース
すべて見える間取りなので、キッチングッズもダイニングテーブルからごらんの通り。収納でありつつ、ディスプレーとしても美しい
禅寺に行った。
ふすまを開けると、裏庭の竹林から表庭に風が抜け、さやさやと葉がすれの音がすぐそばに聞こえた。庭園デザイナーでもあるその寺の住職は、「日本の文化は、いかに自然を家や暮らしの中に取り込むかを大事にしてきた。だから住まいにも濡れ縁があり、ふすまなどの建具をはずして庭の緑を四方からとりこみ、愛でることができるような造りになっている」と語った。
ふすまを開けると、窓一杯に若葉が目に飛び込み、まるで一枚の絵のようである。しみじみと、建具を外して部屋を自在に使う日本建築の妙を実感した。
私たちは、不動産広告を見るとき、つい部屋数を気にするが、そんなものはなんの糧にもならないと、そこで風に吹かれていると心から思えてくる。
それからしばらくして、中古のマンションを買ったという夫婦の家を訪ねた。奥さんはインテリアの記事なども書く人で、住まいには造詣が深い。そこで見たのは、またしても「建具を取り外した家」だった。二人暮らしで、妻はSOHOだし、当然、仕事部屋と寝室は分けているんだろうと勝手に想像をしていた私にとって、それは大きな驚きだった。
キッチン、寝室、仕事部屋、ダイニング。まった仕切りのない55平方メートルワンルーム。2LDKだったのをわざわざ間仕切りを外してリフォームをしたという。
ワンルームでありながら、コーナーごとに用途を使い分けることができ、なんとも使いやすそうである。実際、思いのほか支障がなかったと、彼女は教えてくれた。
私を含め女性3人でおしかけ、みんなでワインを飲んだ。ひとりはダイニングに腰掛け、ひとりはテレビの前のウェグナーふうチェアでくつろぎ、ひとりは部屋に面したテラスで一服。家主は、部屋すべてを見渡せるお気に入りのキッチンでチーズを切っている。
それぞれが好きなエリアで、互いの気配を感じながらゆったりくつろげる。思いきった間取りだけれど、これもまた、日本の住まいの原点ではあるまいか。
海外では、部屋を「ベッドルーム」と記すところが多い。2ベッドルーム+キッチン、バスルームというように。部屋数が多いと豪華に見えるが、日本の場合は、ゆたかさや快適さのものさしは、部屋数だけでは表しきれない。そういう数字ではかれない価値観がほかにある。
子どものいない共働き夫婦ならではの、潔い間取りに感心しながら、私は再びいつも思うことをあらためて再確認した。住まいは十人十色。正解はないし、どこまでも自分流でいい。いいのだけれど、その土地の文化や気候風土に合わせ、伝統にかなったスタイルだと、さらになお心地が良くなる。

長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、12歳、8歳の4人家族。
著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』『スピリッツ・オブ・ジャンク・スチル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)の3部作。
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