現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 住まい
  4. 小さな家の生活日記
  5. 記事

収納ブームに陰りが!?インテリア雑誌の編集会議にて

2010年7月12日

写真大型道路建設のため変わりゆく下北沢の閉店ショップから譲り受けたガラス棚。(6 月28日本欄掲載)。私なりに厳選した結果の産物。

 インテリア雑誌の編集会議の場で、「収納(というテーマ)はあいかわらず売れるが、100円ショップの商品をとりいれて工夫して収納をするとか、収納カウンセラーと呼ばれる人のアイデアをこまごま紹介するという記事があまりうけなくなってきた」という話が出た。その手のアイデアや知恵は出し尽くされたからではないかというのが、おおかたの見解だった。

 なるほど、たしかにその実感は私にもある。丁寧に編集されたページを見ても、このアイデアどこかで見たなという既視感があったりする。カゴ、ブックスタンド、ワイヤ。100円グッズの収納用レギュラー選手を見ると、また君かと思ってしまう。たしかに便利だし、我が家もシンク下や食器棚の中など、ずいぶん助けられたのではあるが……。

 「ネタが飽和状態」ということ以上に大きな要因がある。読者は、「どう整理するか」より、「なぜものが増えるのか」や「増やさない暮らし方や思考法」を知りたいという欲求のほうが強くなっているのだ。もっと根本的な、シンプルに暮らすための思考のメソッドを知りたい。買わない習慣や、捨てたり整理したりする習慣を促す書籍が受けているのもそのためだろう。

 つまり、ちょっと乱暴に言うと、すっきり収納するためにグッズを買い、知恵やアイデアや情報を雑誌や他者から求める時代は終わったのだ。ものが増えるという根本的な問題を解決しない限り、すっきりはしないとみな気づき始めたのである。行き着く先はきっと、あふれるものを首尾よく片付けることではなく、金子由紀子さんや辰巳渚さんらがつづっているように「持たない暮らし」。

 しかし、だからといって、何もない部屋で清貧に暮らそうというのではない。彩りを添えたり、気持ちを華やかにしてくれたり、ちょっとしたスパイスになるようなものは、厳選して採り入れたいというのが、最近の新しい傾向だ。

 好きな作家の焼き物や民藝(みんげい)の器、家具作家のオリジナル家具などには、少々値が張っても出費を惜しまない層は確実に増えている。オンリーワンの雑貨や道具を、自分のためにあつらえる。多くは持たないが、そういう楽しみは大事に持ち続ける。だから、クラフトフェアやものづくり作家の青空市、ウェブショップ、週末ギャラリーなど、規模は大小さまざまなれど、全国各地で増え続けており、取材の機会も多い。ギャラリストやギャラリーを運営するオーナーにあこがれる若い人からの相談も少なくない。

 表面的なお得&便利情報から一歩踏み込み、モノにあふれかえった暮らしそのものを見つめ直したいという欲求はとても自然で、よい流れだと私は思う。だが、そのかたわらで、暮らしが一つの舞台装置のようになりつつあるのを感じる。厳選したよいものに囲まれている自分もまた、舞台の役者であるかのような。とするならば、私はその役者や舞台を作る裏方の人たちに取材していることになるのだろうか。そこでは暮らしの実体や本質は見えるのだろうか。すっきり美しいのであるが、ときどき、どこか薄っぺらな感じがしてならないときがある。

 民衆の芸術を重んじ、生活と芸術を一体化させるアーツアンドクラフツ運動を展開したイギリスの思想家でありデザイナーでもあるウィリアム・モリスは、「美しい生活をしよう」と135年も前に説いている。あのモリスが提唱した暮らしも、舞台装置であったのか。住み手は演者なのか。内実がゆたかでなければ、表面のとりつくろった付け焼き刃の思想など、簡単にはがれ落ちてしまう。

 そんな小さな疑問を心の隅に抱きつつ、全国各地、いろんな家への取材がこれから始まる。編集の旅が終わる頃、なにかひとつでも答えが得られていたらいいと思う。

プロフィール

大平 一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、14歳、10歳の4人家族。

著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』『スピリッツ・オブ・ジャンク・スチル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)の3部作。

ホームぺージ「暮らしの柄」

検索フォーム

おすすめリンク

「とりあえずとっておく」は禁句! あふれたモノをスッキリさせる快適生活20か条

毎日ちょっとの「持たない」習慣で、いつの間にか部屋がきれいに

全国の懐かしい小さな町々を歩いて選りすぐった68軒の喫茶店


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介

提携サイトで探す

  • 全国の売買物件をお探しの方アットホームスーモ
  • 全国の賃貸物件をお探しの方アットホームスーモ
  • 不動産会社をお探しの方アットホームスーモ

あなたの希望に沿った不動産情報・マンション情報を検索!

カテゴリ
都道府県

あなたの希望に沿った不動産情報・マンション情報を検索!