テーブルの下にガスストーブを置いているが(置いてもいい特殊なシステムのもの)、暖気のためにテーブルの板に隙間ができてきた。
テーブルは去年買ったばかり。安物だが無垢材の手作りだ。無塗装なので、傷も付きやすいし、湿気による伸縮もある。10年くらい前の私なら、せっかく買ったものに隙間ができたら「すわ!不良品」と大騒ぎしたかもしれない。いきりたって店にクレームの一つもつけただろう。
だが今は、無垢材は呼吸をすると知っている。湿気を吸って膨脹するし、乾燥すれば縮んで隙間や割れ目ができる。梅雨の時期と冬で、わずかだが見た目も変わるのだ。
多少の隙間ができたからといってそれほど困ることもないし、季節によって表情を変えるのもいいものだ、くらいに拡大解釈して気に留めない。木が縮んで隙間ができても、きっとそのうちふくらんで目が詰まると知っているから慌てずにすんでいる。そういう変化とひき替えに、やわらかな手触りや節の模様、杉の香りを堪能できるのだから“ちゃら”なのだと。
しかし、最初からこんな風にわりきれていたわけではない。前の賃貸の家に門を作ったときのこと。友だちの家具作家に、木製のそれをたのんだら、梅雨の時期にふくらんで左右の扉が閉まらなくなった。作ってもらってすぐだったので、慌てて電話をした。奥さんは、「ああ、それは困るよね、すぐ直しに行かせるね」と言った。礼を言うと、申し訳なさそうにつぶやいた。
「無垢だからね、どうしても多少の伸び縮みは今後も出ちゃうと思うよ」
私は、はっとした。無垢で作るというのはそういうことかと気づいた。限られた予算だと、塗装や材料の質にも限界がある。それでも、あの風合いを手に入れたいときは、天然の材料を使うがゆえの覚悟が、こちらにも必要なのだ。
漆喰、珪藻(けいそう)土、天然木、石、土。積極的に自然素材を使うある建築家が、取材でこう嘆いていた。
「見た目の味わいや、手触り、調湿効果などよくご存じのお施主さんでも、いざ自分でお金を出して建てると、小さな傷や伸縮による亀裂に対しては厳しいクレームを出します。例えば無垢材とはこういうものというデメリット的な特性のほうをあまりご存じないからなのです。アンティークの建具を使いたいとおっしゃる方にも、事前によくよく説明をします。冬や梅雨の時期はしまりづらくなることもありますよってね」
見た目で選ぶのは悪くない。自分が好きなものに囲まれて暮らしたいという気持ちは誰にでもある。そのときに、大量生産の工業製品ではないがゆえの長所短所を理解しておけばいい。
米粒が入り込みそうなほどのテーブルの隙間を見ると、「ああ、木も生きているんだなあ」と愛しい気持ちになる。……なんだかもう、老境の域に近いようだ。ところで、賃貸の我が家のフローリングも無垢である。昨夜、夫がそのフローリングの端のささくれが足の裏の刺さったとうめいていた。横で私は「そら、ささくれもあるわいな、無垢なんだから」と冷たく言い放った。自分に刺さったらもっと大騒ぎするのだろうけれど。

長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、16歳、12歳の4人家族。
著書に『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつ のわが家』(講談社)、『日曜日のアイデア帖〜ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』(チルチンびとの本)など。【編集または取材を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』(主婦と生活社)、『続 暮らしのヒント集』(暮しの手帖社)など。最新刊は『もう、ビニール傘は買わない。〜暮らしと自分を変える60の習慣〜』(平凡社)。
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