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今週は相続時精算課税制度に迫ります。
回答者 税理士・多田雄司さん
 2,500万円までの贈与であれば贈与税がゼロになる特例ができたようですが。

 最近は高齢化が進み、被相続人である父母の死亡年齢が80歳以上、財産を相続する子の年齢が50歳代以上というケースが多くなってきました。

 50歳代は通常、子育ては終わったか最終段階の世代でしょう。また、マイホームの購入は終わっており、残った住宅ローンを支払っている思われます。

 長寿社会の進展で、子供にとって最もおカネが必要な時期を過ぎたあとになって、相続で父母の財産を引き継ぐケースが多くなりました。資金を一番必要とするタイミングで相続が行われにくくなっています。国全体から見れば、おカネが有効に活用されていないことを意味します。

 これまでも生前贈与という制度がありましたが、生前贈与は「相続税逃れ」ととらえられていたので、贈与には高い贈与税を課す仕組みになっていました。

03年1月1日以後適用される贈与税の速算表
課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1000万円以下40%125万円
1000万円超50%225万円
例)2500万円を贈与した場合
(2500万円−110万円)×50%−225万円=970万円

 そこで国は、新たに「相続時精算課税制度」(以下「新制度」といいます。)というルールを創設しました。とりあえず一定額(新制度では2500万円、住宅資金なら3500万円)まで課税されずに贈与を受け、最終的に相続する段階で、贈与額と相続額とを合算して税額を決め、支払う制度です。

 今までの贈与税はどうなるのですか。

 従来からある相続税・贈与税のルールと新制度は、どちらかを選ぶことになります。

 新制度の概要は。
 主なルールを、図表で示しました。こちら>>
 従来の制度と新制度を比べると、税金の支払いではどちらが有利なのでしょう。

 贈与を受けてから相続までの期間やその間の物価変動など、ケースによってさまざまで、一概には言えません。

 例えば、土地1億円を贈与し、3年後に親が死亡しました。現在のようなデフレが続き、3年後に時価が8,000万円に下がったとします。新制度では相続税を贈与時の1億円を基に計算します。従来の方式では時価の8,000万円を基に計算するので、新制度を選ぶと相続税の負担が増えます。

 これに対し、1億円の現金を贈与し、親は20年後に死亡しました。子は1億円から支払った贈与税1,500万円(注)を差し引いた8,500万円を預金し、利息を受け取れます。また他の運用に回すこともできるでしょう。金利分は新制度が有利になります。また、インフレになるとおカネの価値が下がるので、おカネの価値が高いうちに資金を手に入れられるという意味では、一般的にインフレになれば新制度が有利といえます。
(注)(1億円−2,500万円)×20%=1,500万円(新制度での税率は一律20%)

 新制度を選ぶメリットは何ですか。

 子がマイホームを購入するとか、孫(子の子)が私立医科大学に入学して多額の学資が必要な場合など、一時的にたくさんのおカネが必要な場合に、税金をたくさんとられずに使うことができます。

 例えば、2,500万円の贈与を考えた場合、従来の方式では、970万円の贈与税がかかります。しかし、新制度では、2,500万円の非課税枠があるので、贈与税の負担はゼロになります。住宅取得資金の場合は、1,000万円の上乗せが認められ、非課税枠が3,500万円になります。

 このように、子に多額の資金が必要な場合に新制度は役に立ちます。

 親と子に年齢制限がありますが。

 親は65歳以上、子は20歳以上が要件になっています。ただし、住宅取得資金については、親が65歳未満であっても適用されます。

 父とは新制度、母とは従来方式と、別々に選択することはできますか。

 認められます。他の兄弟姉妹も同様に選択することができます。つまり、姉は新制度、弟は従来方式というように。

 新制度を選んだけれど、気が変わって従来方式には戻りたくなったらどうしますか。

 いったん新制度を選ぶと、再び従来方式に戻ることはできません。

 従来方式の贈与税の税率は高いですが、従来制度でも生前贈与は毎年110万円の範囲内で無税です。贈与後3年が経過すると相続財産に加え直す必要もありません。

 新制度を選択すると、110万円の非課税の取扱いはなく、生前贈与による節税策を講じることはできなくなります。また、例え年間1万円の贈与を受けても申告する必要があります。

 したがって、新制度を選ぶか従来方式によるかの判断が最も重要になります。

 新制度を選んで多額の財産を贈与してもらったので、親が死亡した時には遺産を放棄することにします。こうした場合はどうなりますか。

 民法では、遺産を放棄すると初めから相続人にならなかったとみなされます。従来方式では、この考え方をベースにして遺産を放棄した人を除外して相続税を計算します。

 しかし、新制度は、民法とは無関係に税の世界で独自のルールを定めたものです。したがって、例え遺産を放棄しても、新制度に基づいて贈与を受けた金額は、相続財産に加えなければなりません。

 新制度での複数年にわたる贈与は。

 認められます。非課税枠の2,500万円は新制度を採用して親が死亡するまでの贈与の累積額に対するものです。

 新制度の非課税枠2,500万円は相続税ではどう計算されるのでしょう。

 贈与段階で非課税になりますが、相続税の計算では全く考慮されません。

 贈与を受けた段階では非課税枠2,500万円により課税されない部分も含めて、相続時には贈与を受けた財産の全部を相続財産に加えなければならないのです。

 例えば新制度で5,000万円を生前に贈与され、相続時にまた5,000万円を相続した場合には、新制度の非課税枠2,500万円は考慮されず、1億円に対して相続税が計算されることになります。

 新制度で支払った贈与税が相続税を上回る場合は。
 還付されます。つまり、新制度における贈与税は、相続税の前払税金と位置付けられています。
 新制度はいつから適用されるのですか。

 03年1月1日以後の相続又は贈与からになります。

図表 相続時精算課税の主なルール

1 適用対象者

(1) 贈与者は、その年の1月1日現在で65歳以上の親

(2) 受贈者は、その年の1月1日現在で20歳以上である子又はその代襲相続人である孫などで、将来法定相続人になる予定の人
2 選択の届出
 新制度を選択する子は、これを適用する贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署長に対して、新制度を選択する旨の届出書を提出する。
3 選択単位

 新制度の選択は、次の単位で選択する。
(1) 受贈者は、兄弟姉妹ごと
(2) 贈与者は、父、母ごと
4 継続適用
 新制度を選択すると相続時まで継続して適用しなければならない。
5 贈与の対象財産
 贈与財産の種類、金額、贈与回数の制限はない。
6 贈与税額の計算
(1) 受贈財産の区分

 贈与税の申告に当たっては、新制度の適用を受ける受贈財産と従来からの贈与税の適用を受けるその他の人から受ける受贈財産を区分する。

(2) 贈与税額

 新制度による贈与税は、次の算式による。

贈与を受けた金額
2,500万円(注)
×
20%
この制度での贈与税額
 (注) 前年までに使った控除額があれば、その金額を除き、その年の贈与を受けた金額を限度とする。

(3) 2,500万円の控除を認める要件

  贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署長に対し贈与税の申告書を提出し、併せて今回控除を受ける金額、過去に控除を受けた金額などを記載した書類を提出した場合に限り適用する。ただし、提出できなかったことにやむを得ない理由がある場合は、2,500万円の控除が認められる。

7 相続税の計算
 子は、親が死亡した場合には、次の手順により相続税額を計算して納付する。

(1) 贈与財産と相続財産を合計

  相続時までの受贈財産を相続財産に含める。この場合、贈与財産は贈与時の時価による。

(2) 相続税の課税対象額

  次の図のように課税対象額を計算する。

  相続財産の相続時の時価=A

  贈与財産の贈与時の時価=B

  債務、葬式費用=C

  基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)=D

  課税対象額E=(A+B−C−D)

(3) 本人分の相続税額

 1 課税対象額を基に、従来と同じ方式で相続人全員分の相続税額を計算する。

 2 1の相続税額を相続人が取得した純財産の価額の比で案分して、各相続人の相続税額を計算する。

 3 新制度を選択した相続人は、本人分の相続税額から過去に支払った新制度に基づく贈与税額を控除して、支払う相続税額を計算する。

 4 もし、過去に支払った新制度に基づく贈与税額が本人分の相続税額を上回った場合は、上回った金額は還付される。

8 適用時期
 03年1月1日以後の相続又は贈与から適用する。





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