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今週は賃貸契約の中途解約に迫ります
回答者 弁護士・安彦和子さん

 1年契約でアパートを借りました。ところが住み心地がとても悪いので、住み始めて1カ月たたないうちに契約書の特約条項に従って1カ月後に立ち退きたいと申し入れました。大家さんからは、特約通りに契約の残存期間の10カ月分の家賃を支払ってくれと求められました。支払わなくてはいけませんか。

具体的に回答する前に、家の賃貸借契約の解約は法律上どうなっているかみてみましょう。  家の賃貸借契約には、従来からある借家契約(従来型)と定期借家契約があり、従来型には、さらに期間の定めのある契約とない契約があります。それぞれ中途解約は次のように規定されています。

 (1)期間の定めのある従来型借家契約は中途解約の規定がないので、原則として解約できません。

 (2)期間の定めのない従来型借家契約はいつでも中途解約できますが、借り主と大家さんで条件が違っています。借り主から申し出た場合は申し入れてから3カ月後に解約となり、大家さんから申し出た場合は「正当事由」がなければならず、解約も申し入れてから6カ月経過時となります。  正当事由というのは、双方の家を使用する必要性、借り主の使用状況・家賃の支払状況、権利金更新料の授受の有無・金額など総合的に考えて、借り主の明け渡しが妥当と思われる事由をいいます。かなり限定的に解釈されます。

 (3)定期借家契約は、契約期間を確定させて期間満了時に契約の更新が認められず借り主が明け渡すということに意味を持たせた契約ですから、原則として中途解約を認めていません。しかし、例外として借り主に転勤があったり病気療養する事態になるなどのやむを得ない事情がある場合には解約の申入れをして、1カ月後に契約を終了させることが出来ることになっています。

 家の賃貸借で一番多いのは、(1)で1年なり、2年なりの期間を決めて契約し、中途解約の場合は1カ月前までに申し出るという特約条項がついた契約ではないですか。

 そうですね。特約条項があれば中途解約できます。借り主からの申入れによる特約条項は有効と解されているので、1〜2カ月間の予告期間をおいて中途解約を認める特約条項を設けているのが一般的傾向といってよいでしょう。なかでも1カ月の予告期間を設けている契約が多いと思いますが、これは国土交通省が指導しているためです。

 注意しなければならないのは中途解約の申入れが借り主と大家さんでは違うことです。

 借り主からの申入れによる特約条項は有効と解されていますが、大家さんからの申入れによる特約条項は無効と解されています。

(1)の期間の定めある従来型借家契約は大家さんからの申入れについて次のような規定があります。期間満了の1年前から6カ月前までの間に借り主に対して契約の更新をしない旨の通知をしなければならず、(2)の期間の定めのない契約についてはいつでも解約の申入れをすることができますが、いずれについても「正当事由」がなければなりません。しかも正当事由はかなり限定的に解釈されるので簡単に認められません。例えば、大家さんが急に病気の父親を引き取ることになったが、部屋が足りず、賃貸している部屋が必要になった、などの場合に認められるようです。

(3)の定期借家契約についても中途解約条項を認めると本来の確定期間貸すという趣旨に反することになって、借り主に不利な特約となるからです。  借り主と大家さんに差があるのは、消費者が契約知識、資力、交渉力などにおいて大家さんより弱い立場にあって賃借人の利益を保護する必要があるからです。

 さて、本件です。特約に従って残存期間の家賃を支払わなければなりませんか。

 相談事例では、契約書に「途中解約の場合、1カ月前までに解約の申し入れをする。契約の残存期間の賃料を払う」という特約条項が盛り込まれていました。この件は、平成13年4月1日から施行された「消費者契約法」により無効と解されます。

 この法律は事業者と消費者の間でなされた契約について、一定の要件の下に契約を取り消したり消費者にとって不利な契約条項を無効としている法律です。9条1号では契約解除に伴う損害賠償額や違約金を定めた条項が、同種の事業者に生ずる平均的な額を超える部分を無効としています。

 賃料は本来家の使用料の対価です。退去後に残存期間の賃料を支払うのは理に合いませんし、▽大家さんは1カ月の予告期間に次の借り主をさがして契約を締結することができる▽同業者の特約条項が1〜2カ月の予告期間で契約を終了させていることが多い、などを考慮すると、残存期間の賃料相当額を支払わせるのは、同業者に生ずる平均的な額を超えていることが明らかなので、9条1号により無効と解されます。

 同10条でも、消費者の義務を加重する契約を無効としていますので、本件の借り主の支払い義務は通常より加重されているため同法の趣旨からも無効となるでしょう。

 そもそも、1年契約で入居したのに、住み始めて間もなく借り主に退去されるのは、大家さんにも損害になりませんか。

 本件では使用期間2カ月間、1カ月の予告期間がおかれていること、それに住み心地がとても悪いとのことなので、説明不足があったとも考えられます。双方、よく話し合って、特に大家さんにどのような損害が発生したかについて明らかにして、これを基礎として支払額を決めたらいかがでしょうか。賃料の1カ月程度が相当ではないかと思われます。

 こうした例は、入居者が学生さんで、初めて上京するに際して自分で物件を見ずに親戚や知人に物件の選択を任せて契約し、住み始めて不満を持つというケースに多いようです。慎重に物件を選らぶことが基本でしょう。

 このようなトラブルを避けるにはどうしたらよいでしょうか。

 契約書に署名捺印する前に、契約書をよく読むことです。契約の途中で何が起きるかわかりません。中途解約の特約条項があるかどうか、特約があったら、どういう条件なのか確認することです。少しでもわからないことや疑問があったら信用できるところに相談したり調査して、十分納得してから署名捺印してください。






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