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今週は住宅ローンの保証契約に迫ります
回答者 弁護士・安彦和子さん

 大手銀行に住宅ローンを申し込んだのですが、保証会社から保証を断られました。そのため、融資そのものを受けられなくなりました。相談者Aさんは、保証会社が断ってきた理由に納得が行かないのですが、保証会社の判断を覆すことはできますか。

 結論からいうと、「契約自由の原則」があるので、ほとんどの場合、覆すことはできないと思います。

 まず、住宅ローンの保証委託とは何か、説明して下さい。

 住宅を購入する場合は一般に住宅ローンを利用します。住宅ローンは高額であり、長期間にわたるので、その資金を融資する金融機関は返済を確実にする方法の一つとして、借り主と保証会社との間に保証委託契約を結ばせます。保証委託契約は、借り主が住宅ローンを支払えなくなったり、支払いが滞ったりした場合に、保証会社が融資先にローン残代金を支払うという内容の借り主と保証会社の間の契約です。保証会社の多くは融資会社と資金的にも人的にも密接な関連がありますので、融資会社が保証会社を指定します。

 住宅ローンと保証委託契約の仕組みはどうなっていますか。

 住宅ローン契約と保証委託契約は三者間契約の関係にあり、手順は次のようになります。

(1)融資を受けようとする者(借り主)が銀行など金融機関に住宅ローンの申し込みをします。

(2)金融機関は融資してよいかどうかを審査して融資決定をします。

(3)金融機関は融資申込者に対して、融資支払いについて保証会社と委託保証契約を締結するよう指示します。通常、金融機関は関連会社の保証会社を指定します。

(4)融資申込者は保証会社に住宅ローン支払い保証委託の申し込みをします。

(5)保証会社は保証してよいかどうか審査して保証を決定します。

(6)融資申込者は融資する銀行などと「金銭消費貸借契約」を、また保証会社と「保証委託契約」をそれぞれ締結し、このほか、融資申込者は融資機関または保証会社との間に不動産に対して「抵当権設定契約」を結びます。

(7)金融機関は融資を実行します。


 さて、いよいよ本題です。Aさんは築10年の中古物件を購入し、大手銀行に住宅ローンを申請しました。銀行側は、Aさんの勤める会社が信用があり倒産の恐れがない、年収に対するローン返済額の比率も基準を下回っていることなどから融資基準に合致する案件だとして保証会社に保証できるか否かを確認しました。

 そこで保証会社が審査に入りました。中古物件だったので新築時の建築確認申請まで調べました。すると、Aさんが購入した物件は木造3階建てなのですが、木造2階建てで申請していることが判明しました。保証会社は、ロフトのように床面積を一部増やすような工法ならまだしも、Aさんの購入物件は総3階建てとも表現すべきで、錯誤などではなく確信犯的な行為であり、虚偽申請は明らかだというのです。そして「法令順守の観点から、いったんルールを破った物件には保証をつけない」という立場から保証契約の締結を断ってきました。Aさんは、虚偽申請の責任は自分にはないと主張しましたが、聞き入れられませんでした。購入者に虚偽申請の責任がなくても、保証会社は保証委託申し込みを自由に断ってもよいのですか。

 保証委託契約は契約の一種です。契約は「契約自由の原則」が基本です。契約自由の原則の一つは「契約を締結する」または「契約を締結しない」のいずれでも自由に決めてよいというものです。保証委託契約は契約自由の原則が前提となります。

 ご相談の件は、2階建てと申請しながら3階建てを立てたということで、違法建築のおそれがあるとして保証委託申し込みを拒否したと考えられます。もし違法建築だとすると、保証委託することは違法行為を是認することになり、また、借り主のAさんがローンを支払えなくなった時に、保証会社が未払い代金を支払っても、抵当を設定した物件が違法建築物件では評価が低くなり、銀行に支払った代金を回収できないおそれがあると判断したものと思われます。こうした判断は、契約自由の原則の範囲内だと思います。

 Aさんは物件購入の際に、虚偽の申請をしていることはもちろん知らされていませんでした。

 確かに、2階建てで申請しながら3階建てを建築しているのですから、柱の太さやスジカイの入れ方など、本来の3階建ての基準に合致しないかも知れません。しかし、それなら実態を調査すれば、違法建築かどうかは判断できるでしょう。Aさんは保証会社に「違法建築かどうかが問題なら、実際に調べてほしい。その結果違法建築なら、保証を受けられなくても納得する」と要請したのですが、保証会社は「Aさんに責任がないことは理解できる」としながらも、保証するか否かは「実際に違法建築かどうかではなく、法令順守の立場からいったん虚偽申請という社会のルールに反した物件には保証しない」と回答しました。Aさんとしては10年前の虚偽申請を取り消すことは不可能ですから、どうしようもないのですが、こうした理由でも、契約自由の原則が優先するのですか。

 この場合は契約自由の原則の範囲内でしょう。というのは、違法建築であるかどうかを調べて融資する義務はなく、その保証会社が、「形式的な厳格な基準に従って、保証するかどうかの決定をする」という社内ルールをもっていると考えられるからです。どういう社内ルールを持つかを含めて、契約自由の原則だと思います。

 ただ、契約しないことが公序良俗、信義誠実の原則などに触れていれば別です。

 この場合の公序良俗、信義誠実の原則とは何ですか。

 例えば、外国人であるからとか、犯罪歴があるからとかいう、人権にかかわるようなことなどを理由にした拒否は、公序良俗、信義誠実の原則に反すると思います。ただ、こうしたことを保証会社が表だって拒否の理由にすることは考えにくく、「契約自由の原則」が広く解釈されて、保証会社の裁量権は極めて大きいというのが実態だと思います。

 Aさんとしては、怒りの持って行き場がないのですが。

 Aさんとしては、虚偽申請までは保証の審査基準としない、別の銀行の住宅ローンに申し込むのが一番実態的な解決方法だと思います。

 どうしても、虚偽申請が許せないのであれば、民法709条に従って、「不法行為の存在を知ってから3年以内、あるいは売買契約から20年以内」に、虚偽申請をした建築会社なり設計事務所なりを損害賠償で訴えることは、法的にできなくはありません。ここでの教訓は、大きな買い物をするほどに万全の策を講じなくてはならないということですね。






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