【質問】 借家がかなり傷んでいるので大家さんに修繕のお願いをしたところ、朽廃しているから明け渡してほしいと言われましたが、応じなければならないでしょうか。建物の朽廃とはどういう状態をいいますか。
【答え】 建物が時の経過によって自然に損傷して、人が住むに耐えられない程度に傷んだ状態をいいます。抽象的な説明ではわかりにくいので、朽廃を認めた判例と否定した判例を紹介しますが、朽廃についてはかなり厳しい認定をしています。
(朽廃を認定した判例)
(1)築後60年を経過し、屋根瓦がずれ落ち雨漏りの箇所が多く、周囲の壁は崩壊し大穴があき、柱、板類、土台等は腐食して再びそのまま柱として使用できるものはなく、板類も使用に耐えるものはほとんどなく、修理するとしても新築に近い大改造を要し、経済的には新築する方が有利である。
(2)すでに63年余を経過し、柱の大半は下部が腐食、屋根には一部雨漏り、周囲の壁も一部くずれ落ち、家屋の西側や北側が相当に傾斜し、倒壊をおそれられる状態で、近隣の人、警察からも警告があった。
(3)柱の根元部分はほとんど腐食し、屋根もかなりいたみ、壁板も腐り、非常階段も腐朽破損して使用不能、玄関の土台も腐食して戸の開閉ができず、建物が傾き倒壊防止の支え棒がされ、消防署から建物改修を要望されていた。
(朽廃を否定した判例)
(1)木造建物につき、その柱、桁、屋根の小屋組などの要部に多少の腐食個所がみられても、これらの部分に基づき自らの力で屋根を支えて独立に地上に存在し、内部の出入りに危険を感じさせることもない。
(2)その骨格部分というべき土台、柱脚部および外回り壁下地板、屋根裏下地板等に相当甚だしい損耗があり、屋根瓦にも同程度の損耗があり、内部造作材も老朽化しているが、同時に、また一個の構造物である建物全体としてみるときは、自力によって屋根を支え独立の地上に存在し、その内部への人の出入りに危険を感ぜせしめることはなく、局部的応急修理の上、維持保全の処置を講じるならば建物としての耐久力は安定かつ平衡性を維持し、場合によっては増大される状態にあって、いまだ建物としての社会的・経済的効用を失う程度に至っていない。
(3)屋根、壁、土台、柱等も老朽化、全体に老朽化、損耗し、市場価値は失われている。しかし、日常生活に支障はなく、建物自らの力で屋根を支え、独立して建ち、内部への人の出入りに危険を感じさせるものでなく、したがって倒壊の危険性はまだなく、通常の維持管理、同一性を保ちうる程度の通常の修繕を加えていけば、十数年の使用に耐え得る。
判例が朽廃についてきびしい判断をしているのは、現に人が住んでいる建物が朽廃して住むに耐えられないと判断しにくいからではないかと思われます。ご相談の建物は、損傷程度が具体的にわかりませんが、相当はげしい損傷がなければ朽廃ではないと考えてよいでしょう。
【質問】 建物が朽廃すると借家契約はどうなりますか。
【答え】 建物が使用に耐えられないのですから、借家契約を継続させても意味がないので当然終了します。
【質問】 朽廃にいたらない建物の修繕はどうなりますか。
【答え】 家主は借家人が通常の使用ができるように建物を修繕する義務があります。しかし、ご相談のケースは大家さんが修繕に応じないということですから、このような場合は借り主が修繕してその費用を大家さんに請求することが出来ます。大家さんが支払わなければ、家賃と相殺することができます。