【質問】マンションの管理規約の用途制限についていろいろ裁判が起きていると聞きました。どのようなことが裁判となっているのでしょうか。
【答え】最高裁判所まで行った事件があります。
1979(昭和54)年に2階以上を居住用マンションとして分譲されましたが、1階は集会室と屋内駐車場となり、駐車場部分は101号室として元土地所有者Aの区分所有部分となって用途を「駐車場」として登記され、賃貸駐車場として表示されました。
建築した時点では、容積率の関係から駐車場とせざるを得ませんでしたが、その後、容積率について変更があり、店舗にしても合法となりました。しかしAは、等価交換でこの駐車場を取得したとき分譲業者との間で、「他の区分所有者の承諾なしに駐車場以外の用途に変更しない」という契約をしていました。
この契約が後に高等裁判所や最高裁判所で問題となる“債権契約”といわれるものです。
【質問】それでAさんは、この駐車場を店舗に変更しようとしたのですか。
【答え】Aから101号室を贈与されたBは、4年後の83(昭和58)年、ブティックの店に改造して、登記も「店舗」に変更しました。
この店舗は、その後所有者も賃借人も変わりましたが(省略)、その後3年たってブティックを経営するC社が所有者となりました。
マンションの原始規約(旧規約)には、建物の使用制限として、「区分所有者は、その専有部分を居住目的以外の飲食店等(レストラン、スナックバー、喫茶店、バー、クラブ、ホテルその他これに類する深夜営業を行うものを含む)に使用してはならず、また、飲食店等営業を行う第三者に転売又は賃貸してはならない」旨の規定がありました。
しかし、この旧規約の規定では、C社が経営するブティックのような店舗に使用できないと制限すると解釈するにはちょっと無理でしたし、駐車場しか使えないと解釈するにもちょっと無理がありました。
86(昭和61)年10月、このマンションの管理組合が設立され、第2回管理組合総会において、旧規約の建物使用制限について、「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、店舗,事務所、倉庫等住宅以外の用途に供してはならない」と旧規約を変更したのでした。
しかし、この総会が管理者が開催したものかどうか、総会の適法性も争われました。
87(昭和62)年3月19日、C社は101号室をD社へ譲渡しましたが、管理組合はD社に対して新規約を示し、住宅以外には使用できない旨通告しました。
D社はE社に101号室を譲渡し、E社は管理組合との交渉決裂を覚悟のうえで、88(昭和63)年3月30日、時価相場よりもかなり低い価額で買い取り、裁判を提起しました。
【質問】第一審はどのような判決が出たのですか。
【答え】第一審判決は、
(1)販売当初、駐車場と登記された101号室は、住居や店舗に変更されることは予定していなかったこと
(2)旧規約などから駐車場の現状を変更するのを禁止されていたことから、101号室所有者は駐車場として使用する権利を有するにすぎないこと
として管理組合勝訴となりました。
【質問】第二審の判決はどのようなものだったのですか。
【答え】第二審判決は、
(1)101号室は、飲食店としての使用はもちろんのこと、店舗または事務所などにも利用できない
(2)101号室は、その区分所有権の本来の権利内容としては駐車場にしか使用できないという制限が販売前から分譲業者とAとの間で契約が結ばれていた。これは債権的なものでなく、対物的なものとして特定承継人に対しても効力が及ぶ
(3)また、新たな建物使用制限を定めた新規約は有効なものであり、この新規約によって本件店舗は屋内駐車場の他に住宅としての使用が許されることになった
等々判示し、第一審と同じく管理組合が勝訴しました。
【質問】最高裁判所の判決はどのようになったのですか。
【答え】それが大逆転したのです。最高裁判所(最判平成9・3・27判決)では、次のように判示して、破棄差し戻しを東京高等裁判所に命じました。
『特定承継人を拘束できる制限条項を設ける場合は、規約又は集会決議によって明らかにしておかなければならない。元所有者(A)とか前所有者Bがした債権契約に基づく権利制限の合意を安易に規約上定められた制限条項と同視することは許されない』
という判示でありました。
この判決はなかなか難解です。
くだいて解説しますと、マンションの区分所有者は自己の専有部分を自由に使用できるのが原則ですが、マンションの集合住宅としての特殊性から共同生活上の制限を受けざるを得ません。しかし、これらの制限はマンションの区分所有部分を買う転得者(特定継承者)などが事前に知らなければ、転得者は、後に制限を知って不利益を受けることになります。
最高裁判所は、高等裁判所が分譲業者との間で駐車場に限定するというAが締結した契約は債権契約であって、Aから特定承継した人には効力は及ばないと全く反対の判断をしたのです。
区分所有法46条1項には、特定承継人となろうとする人は事前に「規約」及び「集会の議事録」を同法33条、42条3項、45条2項で閲覧することが出来るので事前に知ることが出来ます。
したがってマンションの区分所有者が自己の権利を侵害されるのは、「規約」及び「集会の議事録」のみであって、本件ではマンション分譲業者と最初の区分所有者Aの間で契約した債権契約は、特定承継人になろうとした人にはわからないのであるから、その契約の効力が及ばず、区分所有法の建前に反するから、もう一度裁判をやり直せと東京高等裁判所に差し戻しの判決をしたのでした。
マンションにおける用途制限・権利制限の定め方は、きちんと規約で定めておかないと大変難しい問題になるということを知らされた事案でした。