【質問】私のマンションは1階部分が3軒の店舗となっていますが、中央にある店舗が薬や雑貨の安売り販売店を開店し、管理組合に無断で、共用部分である店舗前の通路のあちらこちらに1メートル×2メートルの安売りの看板を何本も立てたり、段ボール箱を共有廊下に積んだりしています。どう対処すればいいのでしょうか。
【答え】適正な手続きを経ないで共有部分を一区分所有者が使用することは、区分所有法第6条第1項の「建物の管理又は使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」との条項に該当します。
そして、同法第57条第1項は、共同の利益に反する区分所有者がいる場合は、「他の区分所有者又は管理組合法人は区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる」と規定しています。
従って管理者、多くは管理規約により理事長が管理者となっていますが、理事長は理事会の決議を経て共同の利益に違反する区分所有者に対して、その行為を取りやめるよう請求することになります。しかし、この請求に対しても違反者が応じないときは他の区分所有者は同条2項、3項によって区分所有者集会において、管理者などを原告として裁判を提起することを決議することができます。
【質問】どのような裁判を提起できるのでしょうか。
【答え】共同の利益に反する行為を早く差し止めさせるため、例えば保全処分として差し止めの仮処分申請を行うことが出来ます。また、本裁判で看板等を撤去する裁判を提起することが出来ます。
【質問】差し止めの仮処分申請とはどのような申請でしょうか。
【答え】仮処分とは差し止めの緊急性など、保全の必要性のある場合、地方裁判所に申請できます。このような場合、裁判所で決定が出る前に、「審尋」といって裁判官の前で話を双方が行う場があります。
この「審尋」の場で多くの事例では「和解」といって双方が互譲したり、差し止めの時期などを条件としたりして話し合いが成立する場合があります。話し合いがうまく行かず差し止めを認める決定を求めるときは、申請者は裁判所が命じた保証金を裁判所に納付すると決定が出されます。
【質問】仮処分で決定が出ればいいのですか。
【答え】いいえ、差し止めの仮処分はあくまでも「仮」ですので、その後本裁判を行わなければなりません。
本裁判は管理者(または集会で指定された者)が原告となり、共同の利益に反する行為を行った区分所有者を被告として提起します。
共同の利益に違反する行為は民法第709条の不法行為を構成します。従って、看板などの撤去を求める請求と、不法行為によって害された利益の損害賠償を同時に請求出来ます。
例えば、共用部分を使用している部分の使用料に相当する損害金や必要とした弁護士費用などが請求できます。
【質問】慰謝料は請求できますか。
【答え】慰謝料とは被害者がこうむった精神的苦痛に対する賠償金ですから、管理組合として裁判を提起する場合は管理組合は団体ですから精神的苦痛は認められないため、無理と思います。
しかし、管理組合の理事らに業務費のような形で理事会などに出席した者に費用を支払っている規約などのある管理組合では、この裁判のために理事らに支払った業務費については請求することが出来ます。
あるマンションで、1階店舗の食堂が2階の共用部分の端に無断で排気排煙筒の装置を設置した例で、その目の前の区部所有者2人が同装置の撤去を求めた裁判で、もちろん同装置の撤去は東京地方裁判所・東京高等裁判所で認められ、その上、原告の区分所有者に対し、臭気、騒音、圧迫感などの精神的苦痛の慰謝料を認めました。
判決では1日当たり500円として、設置された日から判決日までの40カ月分を認めました。
500円/日×30日×40月=60万円
原告1人に対して60万円の慰謝料を認めました。また、弁護士費用も認めています。