【質問】上階に先月、夫婦と5歳くらいの男の子が入居してきました。騒音がひどく、深夜1時過ぎまで子供が走り回り、休日の早朝は子供が高い所から飛び降りるのか「ドスン」という音で目が覚めます。
賃貸物件なので仲介した不動産屋に3回も文書などで静かにと申し入れをしたり、自分で注意しに行ったりしたのですが、その時だけ静かにするだけで、またもとの木阿弥です。もうこのマンションを出ようかと思います。
【答え】マンションで一番大きな問題は生活騒音の問題です。約15年くらい前の報道ですが、新しくマンションを購入した5000人の人にアンケートした結果、85%の人が生活には満足していると回答しながら、上階の音に対して不満と答えた人は45%にも上り、2戸に1戸は音の不満を持っている結果が明らかとなったとしていました。
マンションの上階の騒音を少なくするため、いくつかの努力はなされてきました。マンションの建築・分譲に際し、供給者側もコンクリートの床スラブの厚さを15センチくらいから18センチ、あるいは20センチにして防止努力をしており、「L値55の静かな値にしております」とパンフレットに表示する業者も出て来ました。
しかし、1975(昭和50)年ごろに建築されたマンションの床スラブは10センチ〜12センチくらいで、これを15センチの厚さにしたと宣伝した会社の広告が新聞に大きく出たのは82〜83年ごろだと思います。
つまり上階の生活騒音は、まずはコンクリートの床スラブの厚さによってかなり違ってくるということで、改善がなされました。
【質問】確かにコンクリートの床スラブが厚くなったのは最近のマンションの傾向ですが、古いマンションもあり、リフォームされて床がフローリング板となると、とてもうるさくなると聞きますが。
【答え】コンクリートの床スラブの上に床の下地板を張り、またはクッションになる下地を敷き、その上にカーペットを敷いたような場合または畳敷きの場合、フローリング板よりはいくぶん静かだといわれています。
それはいくつかの裁判例でそのようなケースがあるからです。
例えば、裁判において「請求の趣旨」という裁判の要求が書かれているところに『木製床(フローリング)を畳敷きまたは絨毯(じゅうたん)敷きに変更せよ』と書かれています。内容を見ると、前居住者がカーペット敷きであったのに現住居者がフローリング板にリフォームして住み出してから騒音が激しく聞こえるようになったと書かれています(東京地方裁判所平成3年11月12日判決)。
しかし、フローリング板はダニやほこりなどの衛生面から優れている上、おしゃれな感覚で受け止められています。
【質問】私のマンションでもフローリング板にリフォームする人が多いのです。そして「うるさくなった」と上階の人のことを陰口で言ったりしているのですが。
【答え】マンションは多くの人が住む集合住宅ですから、自分だけが良いというのではなく、他人に迷惑を掛けないようにすべきです。多くのマンションでは総会の決議で使用細則をリフォームの場合のフローリング板はL値45の板にすると決めています。
つまり、フローリング板にはL値55、L値50、L値45などの種類があって、音を小さくするため、板の底にゴム状のものが施工されています。L値45の板の出る音が一番小さく、高額ですがリフォームをするときはL値45のフローリング板を敷いて他人に迷惑を掛けないようにするのが最善です。
しかし、裁判例は騒音に対し消極的な判断が出るようです。東京地方裁判所平成6年5月9日の判例は、上階がフローリング板にリフォームした途端に生活騒音がじかに響くようになって不眠症・ストレス性の顔面神経麻痺(まひ)などに苦しんだ階下の人が損害賠償請求を提起したことに対し、そのフローリング板がL値60という遮音効果の持たない材質であったにもかかわらず、上階の人は階下の人から苦情を受けた後にテーブルの下に絨毯を敷き、子供の遊具を制限するなど配慮したことを認めて、階下の人の請求を棄却し認めませんでした。
【質問】L値60でも、その程度の注意をしただけで騒音となっていないと裁判所はいうのですか。
【答え】騒音と認めるには民法709条の不法行為を構成する程度でなければなりません。つまり他人の権利を害するという故意、過失が必要です。
上記の裁判所はマンションは集合住宅であるから、構造上騒音が伝播(でんぱ)して平穏な生活を妨害する事態がしばしば発生するが、この場合、いろいろな事情を考え、「平均人の通常の感受性を基準として判断し、一定限度までの生活妨害は社会生活上やむを得ないものとしてお互いに受忍すべきものである」と、『受忍限度』という基準で判断しました。
『受忍限度』の判断は具体的に決まっているものではなく、一般人の感覚で耐えるべき限度といわれ、突き詰めて行けば担当裁判官の判断となります。
それではさっぱり分からないではないかという疑問を持ち出されるようですが、遮音等級では、L値55で「少し気になる」程度であり、L値60は「やや気になる。お互いに我慢できる程度」といわれています。そしてL値65では「気になる。子供がいると階下から文句が出る」といわれています。
【質問】そのL値というのは、どうやって測定するのですか。
【答え】騒音測定器というのが、各区、各市の公害課にあって、東京都では無料で貸してくれます。その測定器でまず自分で測定してみてください。
その数値がL値60を超えていれば受忍限度を超えたといえるでしょう。
質問者のあなたも測定した後に移転するかどうか決めた方が良いと思います。
私もこのような測定に立ち会いましたが、いすを引いたような音や足音程度ではL値45くらいしか出ませんでした。