【質問】マンションのような高い建物に入居すれば、豪雨になっても水害など生じないと思っていましたが、突然、上階から水が漏って来たのです。あっという間の出来事で、室内のカーペット、ベッド、タンスの上の置物など全部水に濡れてしまいました。
上階の部屋へ急いで駆け上がったところ、上階も水びたしで大騒ぎでした。ベランダから水があふれて、開いていた掃き出し戸口からも雨水が入ってきました。しかも、しばらく上階の人は、外はすごい豪雨なのに気が付かず、戸を閉めたのが遅れたとのことでした。どうすればいいでしょうか。
【答え】このような豪雨時に(1)ベランダの雨水の排水口がつまっていたため、排水処理が出来ない場合、あるいは(2)屋上の横樋に落ち葉がつまっていて溢れた水が換気孔に入って最上階の部屋に漏水したとか、(3)段階的に高くなっているメゾネットタイプの建物の急傾斜の側溝から雨水があふれ下段の部屋に流れ込んだなどの被害が出ています。
まずだれに責任があるかについて考えてみることにします。
このような建物(工作物)によってひき起こされる損害について、民法717条は、その工作物の占有者がまず一番目の責任を負い、占有者が損害発生を防止するに必要な注意をしたときは、所有者に責任があると規定しています。占有者とは、例えば借りている人を意味し、所有者とは区分所有権者を意味します。
(1)のベランダからの漏水については、次のように考えられます。
ベランダは共用部分ですが、規約では専用使用権といって、そのベランダに続く部屋の所有者に専用で使う権利を与えています。権利の裏には当然、義務が存在しますから、ベランダの排水口から水が完全に排水できるよう障害物をとり除いていなければなりません。
排水口の上に何か物が置いてあったり、枯れ葉やゴミがたまっていたり、排水を妨害していたら、それは上階の人の責任です。
また、豪雨であることはだれでもわかるわけですから、戸を閉めることも上階の人は気を付けていなければなりません。したがって、上階の人は排水口に障害物があったり、戸を閉めるのが遅れたりすれば、過失があるということになります。
民法717条は、不法行為の中で「工作物の責任」といわれる条項ですが、工作物を占有したり所有したりする人に無過失の重い責任を科した規定といわれています。無過失責任であっても、唯一不可抗力のような場合、責任が免れる場合があります。それは台風のようなとき、強風でちぎれた木の葉がとんできて排水口にふたをした場合などは不可抗力といわれ、このベランダを使用する人に責任を追及することは出来ません。
【質問】(2)の屋上の横樋に落ち葉がつまっていて、その雨水が換気孔から最上階の部屋に漏水したとか、(3)のメゾネットタイプの側溝から下段の部屋に流れ込んだ事故はだれの責任ですか。
【答え】屋上の横樋も側溝も共用部分であって所有者は全区分所有権者であり、管理権限者は管理組合(管理者・理事長の場合が多い)であり、管理を委託されているのが管理会社であるので、その中で誰が責任を負うのかが問題となります。
(2)について最上階の水漏れ被害者から管理会社と管理組合に裁判が提起されました。
しかし、管理会社は1カ月に1回清掃しており、それまでにこのような事故が発生したことがないから、毎月1回を超える頻度で掃除をしなければならない義務を有していたとは認められないと、裁判所は管理組合の責任を否定しました。
また、管理組合がこの事故の後、樋などの排水管の改修工事を行ったのですが、裁判所は以前に事故は発生していなかったので、事故の前に改修工事を行う義務はなかったと裁判所は管理組合の責任を否定しました。
【質問】工作物の占有者や所有者は、民法717条で無過失責任といわれる条文で責任をとらされるのに、管理組合や管理会社にはこの規定は当てはまらないのですか。
【答え】管理組合や管理会社はマンションの占有者でも所有者でもありません。管理組合に対しては、区分所有法第18条の共用部分の管理義務を管理組合が負っていますが、管理組合に対しては一般の民法709条の不法行為責任が課せられるもので、「故意又は過失」があったことが成立の要件とされています。また、管理会社に対しても管理委託契約の債務不履行責任が根拠義務となりますので、「故意又は過失」によって被害が生ずることが責任を追及できる要件となります。この点が(1)の事件と異なるところです。