 マンション理事会役員の補償金を決議できるか
弁護士・田中峯子さん
2006年10月21日
【質問】私のマンションの規約では、役員について補償金のような規定がないのですが、マンションの規模も大きく、役員の人の業務負担が大きいので、補償金を出そうという議題が理事会で持ち上がりました。理事会の決議で決められるでしょうか。
【答え】役員の補償金を管理費から支出しているマンションがあったり、支出していないマンションがあったり、それぞれのマンションの事情によって異なっています。
補償金が認められているマンションでも、支払われる場合は理事会に出席した役員に限定されているようです。
この役員への補償について規約の定めがない場合、補償金を出すことについて理事会の決議だけでは決定できません。区分所有者集会で2分の1以上の多数決で可決したマンションもありますが、できれば規約の変更を考え、4分の3以上の多数決による規約変更の手続をとることを勧めます。
【質問】理事の選任について、私のマンションでは各フロアーから毎年1人づつが出て役員になり、役員の互選により理事長、副理事長、監事を決めています。マンションに入居してすでに15年が経ち、区分所有者のうち、約3分の1の人が賃貸をしていて、マンションに住んでいません。そのため、フロアーの役員の順番が回ってきても遠くに住んでいるからという理由で役員にはなりません。住んでいない人のために在住者は、早く役員の順番が回ってきて負担が大きくなっています。
このようなことはどうしたらいいでしょうか。
【答え】マンションを投資の対象として賃貸目的で買った人、古くなったマンションではそれぞれの家庭事情で別の場所に住むようになり、在住者の負担が大きくなっています。
総会の通知やその他の通知を非在住者に送る実費等については、多くのマンションが非在住者に要求しています。
しかし、役員の負担増やその他消防訓練、町内会活動、マンションの催物等、諸々の負担が、居住している区分所有者にかかってきているのも事実です。
あるマンションでは、非在住者に協力金名目で役員手当の財源として、管理費の他に在住組合員には月額1000円、非在住組合員については3000円、つまり2000円の差額を設けることを集会で決議しました。この裁判で判決は、2000円の差があっても不公平ではないと判断しました(福岡地方裁判所、平成13年9月30日判決)。
【質問】そうすると非在住者と在住者の協力金の差が2000円位であれば不公平にならないと考えていいのですね。
しかし、在住者の感覚としては、月額5000円位の協力金を非在住者に要求してもいいのではないかとの意見があるのですが。
【答え】現実に非在住者だけ5000円の協力金を4分の3以上の多数決で規約改正して決定したマンションもあります。
このマンションは大規模(約800戸)のマンションで、役員数も32人という多数に及んでいました。ところが、非在住区分所有者数は約180人に達していたのです。そのため、在住者からの不満が大きくなり、規約を改正して非在住者のみに協力金月額5000円を支払うよう集会で決議したのです。
この集会決議について不満の非在住者が17人いて、5000円について不払いを続けました。管理組合は、そのうち2人に別々に支払いを求める裁判を提起し、同じ大阪地方裁判所でありながら二つの民事部に分かれて係争が続きました。裁判官の独立は憲法で保障されており、二つの部の裁判官は独自の判断に基づき、このマンションの事件につき判決したのです。
【質問】当然、同じ内容の判決が出たのでしょうね。同じマンションのことですから。
【答え】それがなんと、一方では管理組合勝訴の判決が出て、もう一方では非在住者勝訴の判決が出たのです。担当したそれぞれの裁判官が異なった考え方を持っていたためです。その判決の論理を詳しく次号でお話します。
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