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「ここが知りたい」

マンション改修を理事長懇意の会社が担当しました。これはいいのですか。

2007年03月24日

弁護士・田中峯子さん

【質問】私のマンションは昨年、大規模修繕をいたしました。大規模修繕の費用は1億2000万円でした。

 この修繕工事をどこの建設会社が請け負うかについて多くの意見が出ましたが、結局、理事長が懇意にしている会社が信用がおけると理事会で決定し、総会でも2分の1以上の多数決で決まってしまいました。本当にこれで良いのでしょうか。

【答え】大規模修繕をどこの建設会社が請け負うかについて、フェアーにしていかないと、理事が疑われたり、悪い噂を立てられたりしてマンションの中でトラブルが発生しがちです。

 公平を期すため、推薦する建設会社の名を無記名で書いて箱に入れる方法をとったりします。相見積りといって3社くらいに見積りを同時に出させているのが実情のようです。ただ、安く見積った会社が良いのかどうか。材料や工法がどう違うのかを理事会で説明を受けて総会にはかるか、直接総会で説明を受けたりします。

【質問】総会での決議は2分の1以上という普通決議で良いのでしょうか。それとも共用部分の変更として4分の3以上の決議が必要なのでしょうか。

【答え】区分所有法第17条1項が改正され、平成15年6月1日から施行されたのですが、理由は特に大規模修繕について2分の1以上の決議で良いか、4分の3以上の決議を必要とするか意見の対立があったからです。

 改正法は「共用部分の変更は(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者および議決権の4分の3以上の多数による集会で決する」と定めました。改正前は(改良を目的とし、かつ著しく多額の費用を要しないものは除く)となっていたため、大規模修繕に著しく多額の費用を要する場合は4分の3以上の多数決が必要となり、大規模修繕工事が進まない場合が応々にしてありました。そのため、大規模修繕をより早くさせるため「形状または効用の著しい変更を伴わない場合」は、2分の1以上の通常決議で大規模修繕が出来るようになったのです。

 つまり、屋上防水、外壁の塗装、手摺のペンキ塗装等、費用は多額にはなりますが、形状や効用は変更しない工事ですから2分の1以上の賛成で決議することができます。

 しかし、新しく玄関ピロティを店舗にするとか、増築をするとかの変更は形状も効用も著しく異なるので、4分3以上の特別決議を必要とします。

【質問】ところで、理事長は建設会社と1億2000万円を3回に分けて支払う契約になっていたにもかかわらず、4000万円を3カ月以上前に、最後の4000万円を2カ月前に支払ってしまいました。

 修繕積立金はかなり高利の銀行に預けていたので、早く支払ったことにより利息が約200万円も損をしました。

 私は納得がいかないので、この200万円の損害賠償を理事長を被告として裁判を起したいと思います。もちろん、勝訴すれば取り戻した賠償金は管理組合に支払いますが。

【答え】理事長の不当な支払いにより管理組合がこうむった損害を一区分所有者が請求できるかという問題ですね。

 同様な事案について、東京地方裁判所(平成14年7月29日、判例801号236頁)は管理規約に株主の代表訴訟に類する権限が各区分所有者に認められていない以上、一区分所有者が直接、損害賠償請求を理事長に対して行う権限はないと判断しました。

【質問】しかし、区分所有法第18条第1項で一区分所有者には、保存行為として損害賠償請求が認められているのではないですか。

【答え】ところが、判決では、この共用部分の保存行為とは「建物の共用部分そのものの現状を維持する」ことをいうと解すべきであると認定し、理事長がした不法行為に基づいて修繕積立金等が損害にあったとしても、賠償請求することは建物の共用部分の損傷ではないから保存行為に当たらないと判断されたのです。

 このように保存行為の内容を建物の共用部分の保存に限定すると理解すると、理事長の不法行為に対して損害賠償を一区分所有者が請求する方法はないのかということになります。

 つまり区分所有法では、マンション内部で理事長の責任の追及の方法については、何も定めていないことになります。

 したがって、理事長等の不法行為が判明したときは、その役職を解任し、新たに選出された理事長が管理者として区分所有者集会で原告となる決議を得た後、管理組合として不法行為を行った前理事長へ損害賠償の請求を提訴する方法をとらざるを得ません。


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