現在位置:asahi.com>住まい>ここが知りたい> 記事 PR 注目マンション情報管理費等滞納者に区分所有法第59条を適用できるか2007年09月01日 弁護士・田中峯子さん 【質問】私のマンションでは、7階の705号室に住んでいるAさんがすでに5年も管理費を滞納しています。月額25,000円ですから、すでに150万円以上になっています。 理事長から何回も督促状を出しましたし、簡易裁判所に支払い命令を申し立て、その命令も確定しています。 その支払い命令で705号室を差し押さえようと思っても3500万円のB銀行の抵当権がついています。売買の時価もすでに2500万円ぐらいに下落しています。マンションの管理費が先取特権があるということですが、一体、滞納管理費はとれるのでしょうか。 【答え】マンションの管理費は共益費として一般の債権に対し、先取特権という優先債権になっているのですが、抵当権の方が先取特権より優先すると民法では定められています。従って、B銀行が3500万円の抵当権をつけていますと、返済済みの金額を差し引いたとしても剰余がなければ抵当権が滞納管理費より優先します。マンションを競売したときにマンションの競落額がB銀行への返済額より高額でなければ、あなたのマンションに滞納管理費が支払われないのです。 【質問】しかし、このまま放っておくとAさんの滞納管理費はますます増え、それでなくても10戸ぐらいがすでに2〜3年の滞納状態になっており、私のマンションはこれ以上管理費等を納入できる人の管理費を値上げすることが出来ません。何か良い方法はないのでしょうか。 【答え】現在の区分所有法は滞納した管理費等について救済する規定として、第8条でその区分所有権を買い受けたり、競落したりする承継人に対し、その滞納管理費を管理者が請求できることになっています。従って、競落してAさんの滞納管理費を承継してくれる人を見つけたのです。 しかし、滞納管理費があまりにも多額になると誰も買い受けたり、競落したりする人はいなくなり、ますます滞納額が増えて行きます。 多くのマンションは、この滞納管理費等の取り立てに頭を悩ませており、管理組合側で考え出した論理は、管理費の長期滞納は「共同の利益に反する行為」に該当し、区分所有法59条にもとづき、「共同生活上の障害が著しい場合」に当たるものとして、競売申し立ての方法を考えました。 【質問】区分所有法59条で競売できるというのはわかりますが、B銀行の優先債権が3500万円も付いていて、時価が2500万円の価値しかないとすると剰余がないと競売できないのではないですか。 【答え】区分所有法第59条1項の規定は、実質は「共同生活上の障害が著しい場合」に同マンションから明け渡しを求めるものですから、債権の回収を目的とするのではなく、「形式的競売」といって、民事執行法63条の「剰余を生じる見込みのない場合等の措置」として、抵当権等の優先債権があったとしても競売することが出来るのではないかと考えられたのです。 【質問】実際にそのような競売の申し立てをして認められた裁判例はあるのでしょうか。また、認められなかった裁判例もあるのでしょうか。 【答え】(1)大阪地方裁判所・平成13.9.5判決では、長期間の管理費等の滞納者に対して、使用禁止及び競売請求が認められています。 ただし、同事件の控訴審である大阪高等裁判所・平成14.5.16判決では、使用禁止は認めず、競売請求のみ認めました。 (2)東京地方裁判所・平成18.6.27判決では、滞納額169万5000円,約5年間の滞納者に対して、管理組合は次の方法をとりました。 イ 支払い督促命令を得る。 ロ 銀行預金の差し押さえをする(しかし、残高は0円であった)。 最後の方法として、約3000万円の抵当権等がついていたのですが、区分所有法59条に基づき競売の申し立てをしました。 ところが、裁判所は「他の方法によっては、その障害を除去して……共同生活の維持が困難であるとき」の要件が満たされていないと判断し、組合の請求を認めませんでした。 裁判所が認容しなかった判断の根拠は、滞納者が裁判所で謝罪し、滞納管理費の分割返済による和解を希望していると述べた点を重くみたとのことでありますが、5年間も支払っておらず、支払い督促命令を受けた後も支払っていない事実から、分割支払いの和解に応じても、結局は数回支払ってもその後は支払わないのではないかという不安も組合側にはあったのではないでしょうか。 しかし、この判決は、かなり裁判官の主観的な判断であると批判も強かったようです。 次回、東京高等裁判所の厳しい条件をつけて競売を認めなかった判例を紹介しましょう。
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