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共用部分の欠陥(その3)

2008年3月8日

  • 筆者 弁護士・田中峯子

【質問】 前回の「共用部分の欠陥(その2)」で裁判にあたって必要な準備が書かれていましたが、もう少し詳しく教えていただけませんでしょうか。

【答え】 はい、わかりました。

 まず第一に建築士または調査会社による欠陥の調査を行い、報告書を作成してもらうことです。

 裁判に際して、請求の内容を明確に確定するために調査が必要だからです。調査の内容も、例えば「〜であるらしい」とか「〜と推定される」という表現の文章はできるだけ避けて、具体的な欠陥の指摘を表現するように調査をする人、または検査会社に注意してください。

 裁判では欠陥を主張する者がその欠陥を立証(証拠を明示)しなければならない立証責任を負っています。

【質問】 そうすると、例えば構造部分の中の鉄筋などは見えないので、どのように調査するのですか。

【答え】 構造躯体は大きいので全部調査をすることはできませんが、例えば鉄筋が一部露出していたり、さびの茶色い汁が流れ出ていたりすれば、その付近の鉄筋コンクリートの厚さが不足していることが疑われます。

 また、屋上や床・天井スラブに亀裂が入っている場合、設計図上必要とされている太さの鉄筋が、必要とされている本数だけ入っているかどうかなど、コンクリートの表面に現われている現象から非破壊検査をして行きます。

 非破壊検査の機械はX線写真、RCレーダーなどが開発されており、調査会社はこれらを所持しています。

 また、屋上の手すりのコンクリートが落下したときなど、コンクリートの強度不足が疑われた場合、一部を円形にコア抜きして圧縮強度の検査をすることでコンクリートの強度を調べます。

 その他にベランダや廊下の手すりがぐらついていた場合など、その部分をはつって原因を調査する場合もあります。

【質問】 調査報告書を作成するということですが、どのようにまとめるのですか。

【答え】 書き方はいろいろあると思いますが、先ず文章でどの部分にどのような欠陥があるかを整理して具体的に書きます。

 1階玄関・廊下、2階、3階……、というように部分を分けて書く方がわかりやすいでしょう。

 そして欠陥部分を図面に書き入れます。同時に写真も各欠陥について1枚以上必ず添付します。

【質問】 欠陥を補修する方法や費用については、請求する側と相手側との間に、随分開きがあると聞いていますが。

【答え】 欠陥の補修方法と費用の積算書を作成しなければなりません。

 確かに金額の差は大きな開きが出ます。しかし、完全に直らない簡単な補修方法や、新築マンションを購入したのに、つぎ当てだらけの補修を相手方から提示されたときなどは、建築基準法令、告示、日本建築学会のJASSなどを基準として、きちんと正論を主張すべきだと思います。補修方法が異なれば補修金額も当然異なります。ただ、よくある話ですが、あまり重大でない欠陥で「建て替え」を主張する人もいます。そのお気持ちは十分わかるのですが、裁判では重大な欠陥=住居としての目的を達成できないような欠陥がないとマンションの「建て替え」は勝ち取ることができません。

 それは耐震強度不足に近い場合であるとか、補修費用より建て替え費用の方が安い場合などでしょう。

【質問】 分譲業者との交渉も行きづまり、調査報告書も作成されたので裁判提起の声が大きくなってきました。

 つぎはどのようにすれば良いのでしょうか。私のマンションは法人になっていない普通のマンションなのですが。

【答え】 裁判提起の条件として、総会(臨時総会でもよい)において、普通決議で良いのですが、裁判を行なうことを承認する決議が必要です。区分所有法第26条第4項で、管理者が原告となって裁判を提起することを承認する決議と規定されています。具体的にどういう内容で誰を相手に裁判を提起するかを総会で説明して過半数の決議を得なければなりません。

 この決議は個別の事件ごとに原告となる権限を管理者に授権することになっているので、管理者に包括的な訴訟追行権を付与するものではありません。

  この総会決議の議事録は裁判所に提出しなければなりませんので、きちんとした議事録を作成してください。

なお、規約で管理者(理事長)に、包括的に訴訟追行権が与えられていれば総会の決議は不要です。

【質問】 私のマンションは法人でないのですが、裁判の提起はできるのでしょうか。

【答え】 法人格のないマンションでも“権利能力なき社団”として裁判をする権利は認められています。

 ただし、裁判提起をするときに理事長が管理者であるとする規約、理事選出の総会議事録、理事長選出の理事会議事録の提出が必要です。

 訴状の原告表示には、管理者の住所と氏名を記載し、「○○マンション管理組合理事長」の表示は不要であるということになっております。

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