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「ここが知りたい」

共用部分の欠陥(その5)

2008年05月03日

弁護士・田中峯子

【質問】 共用部分の欠陥についてお尋ねします。

 私のマンションは15年経つのですが、地下ピットの壁のコンクリートの間から茶色い汁が出てきています。コンクリートの亀裂が多くあり、ひどいところはコンクリートが浮き上がって、はがれていました。地下であったために誰も入らなかったそうです。

 はがれた部分は鉄筋がぼろぼろでした。その上、鉄筋が露出しているところでは、直径16ミリメートルあるはずのところに13ミリメートルの鉄筋しか入っていないことがわかりました。

 ピットの上には住戸があり、ピットが崩れると住戸も崩れると大騒ぎになりました。どうすればいいでしょうか。

【答え】 前回の(その4)にも書いたのですが、鉄筋コンクリート造は、鉄筋の力とコンクリートの力が噛み合って強さを保っています。しかし、鉄筋は酸性に弱く、水や空気にさらされると腐食します。それを防止するため、コンクリートのアルカリ性が必要で、鉄筋はコンクリートのかぶり厚さで腐食を防止しています。

 ところが、建設業者はこの理屈を十分知っていながら、人の目に触れないところは建築施行令第79条に定められているコンクリートのかぶり厚さを守ろうとしません。

 施行令第79条は次のように規定しています。

『耐力壁、柱、梁は3センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床、梁、布基礎の立上り部は4センチメートル以上、基礎にあっては6センチメートル以上』

 鉄筋が腐食すると体積が大きくなってコンクリートを押しのけ、「コンクリートの爆裂」と呼ばれる現象を引き起こし、コンクリートを浮かせます。するとさらに空気が入って鉄筋を腐食させるという悪循環を招きます。

 また、建物の構造計算は、主に鉄筋の径やピッチなどで計算されますので、細い鉄筋を使ったとすると構造的に弱くできていると言えます。

【質問】 良くわかりました。私のマンションは大騒ぎとなった結果、この欠陥の補修費をどうするか、誰に請求するかなどで議論になりました。

 築15年も経っているので、売主がすでに倒産してありません。請求できないと諦める人もいるのですが。

【答え】 築15年経っていると売主への瑕疵担保(カシタンポ)責任も期間が過ぎています。鉄筋のかぶり厚さ不足は建築基準法令第79条違反であり、もし鉄筋量が不足していれば重大な欠陥であり、建物の安全性に関係する欠陥といえます。建設業者はこの違反の事実を知っているか、または知るべきであった(過失あり)といえます。

 つまり、あなたのマンションの管理組合がマンションを建築した建設業者に対し、不法行為(民法709条)に基づく補修費用等の損害賠償請求ができます。不法行為の時効は、「事実を知ってから3年、不法行為(工事)のときから20年」以内と定まっています(民法724条)。

 したがって、築15年であっても請求できるわけです。

【質問】 建物の安全性に関係することであるから不法行為が成立するとのことですが、「建物の構造の安全」に関することに限定されるのですか。

【答え】 平成19年7月6日に最高裁判所(第三審)で次のような判決が出ました。

 第二審の福岡高等裁判所では、不法行為が成立するには「建物の構造の安全性を欠く場合」と限定していたのですが、最高裁判所では、構造の安全性に限定せず、例えばバルコニーの手すりのぐらつき、各階床スラブのひび割れ、床の鉄筋露出、排水管の亀裂など、直接「構造の安全性」に直結する欠陥でなくても、「建物としての基本的な安全性を損なう欠陥で生じた損害」であれば、不法行為が成立したと判断されました。

 この最高裁判所の判例によって、売主の瑕疵担保期間を経過してしまった築20年未満のマンションは救済されることでしょう。

【質問】 私は、マンションが分譲された7年後に中古でAさんから買いました。マンションの中では、分譲時に買った人は分譲業者や建設会社に損害賠償を請求できるが、中古で買った人は前の所有者のAさんにしか請求できないといわれているのですが。

【答え】 最高裁判所の上記判例は、誰が建設会社に請求できるかも明らかにしました。 最高裁判所は建物の位置づけを、

 『建物は、そこに居住する者、そこで働く者、そこを訪問する者などの様々な者によって利用されるとともに、当該建物の周辺には他の建物や道路等が存在しているから、建物は、これらの建物利用者や隣人、通行人等(以下、併せて「居住者等」という)の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず、このような安全性は、建物としての基本的な安全性というべきである』

 と判断したのです。

 この事例も、中古を買った人がこの建物を建築した会社を訴えたものですが、最高裁判所は、建物はこれに関与するすべての人たちにとって安全でなければならないと判示したのです。したがって、Aさんから購入したあなたも当然マンションの請求に参加できます。

 そして、次のように判示しています。

 『建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして、設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。居住者等が当該建物の建築主からその譲渡を受けた者(中古を買った人)であっても異なるところはない』

 建物のあるべき姿を根本から考えた良い判決文だと思います。


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