2008年10月25日
【質問】私のマンションの1階部分には、分譲時から1階の区分所有者の人たちにそれぞれ専用使用権として専有庭が与えられています。
ところがAさんは、自分の専用庭を駐車場に勝手に変更し、その上、以前からあった門扉を撤去して新しく門扉を作ってしまいました。
規約は古い時期に制定されたため、共用部分の変更には共有者全員の同意が必要であると記載されています。
【答え】この事例のような場合は、共用部分の変更に該当します。
区分所有法第17条は、『その形状または効用の著しい変更を伴わないもの』は普通決議で、それ以外の共用部分の変更は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による区分所有者集会の決議で決めることになっています。第17条のただし書きでは、定数は規約で過半数まで減ずることが出来ると決められています。
あなたのマンションにおいて、専用庭を専用駐車場に変更するのですから、形状、効用の著しい変更として区分所有者集会で区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成で決定しなければならないでしょう。
【質問】理事会からAさんに門扉を元に戻すようにと原状回復の要求を出しましたが、Aさんは絶対に応じないと拒否しました。専用庭は1階の人が奇麗に花を植えて下さるので、私のマンションは美観上、とても奇麗なマンションとして有名なのですが、大変残念でなりません。
今後、管理組合としてはどのような対応をとらなければならないでしょうか。
【答え】管理組合が法人でなければ、総会で現在使用しているAさんに対して裁判を起こして、管理者(多分規約では理事長になっていると思います)が原告となることについて、過半数による賛成を得る必要があります。
裁判の内容は、
(1)駐車場の使用禁止の要求
(2)門扉撤去の要求
となります。
(1)は、Aが専用使用権を与えられているのは、あくまでも専用庭であって駐車場ではありませんので、その効用を著しく変更する場合に当たります。
(2)は、新しく門扉を設置して鍵を新しくつけたことで、これも形状の著しい変更に当たるでしょう。なお、著しいというのは抽象的表現ですので、いずれにしても区分所有者集会を開き、過半数の賛成を得なければなりません。
【質問】しかし門扉は元々Aさんの庭に入るため、Aさんだけが使用していたのですが、これも共用部分に入るのですか。
【答え】これと同じような東京高等裁判所昭和55年3月26日判決によれば、「門扉は人の出入りのためだけではなく、建物、敷地と外部との境界を画して、建物に居住する者全員の安全を保護する目的をも有するから共用部分である。…(中略)…Aらは管理集会において大方の同意を得られないまま、従前の門扉の撤去と新しい門扉の築造をしたのであるから……他の共有者に対する規約上の不作為義務に違反して撤去し、……その義務違反として本件門扉(新設)が存在するので(物権的請求権にもとづく)、上記不作為行為義務違反に派生する違反撤去除去義務が生ずる」との判決を示しました。
しかしこの判決は、原状回復、つまり旧門扉の設置まで求める物権的請求権は不作為義務しかないので、認められないと判断しています。
しかし、区分所有法の昭和58年の改正で、共同の利益に反する行為(区分所有法第6条)は、管理者、管理組合法人による差し止めなどが出来るよう法57条の規定が加入されました。
区分所有法第57条は、
「区分所有者が第6条第1項(共同の利益に反する行為)に規定する行為をした場合またはその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、またはその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる」
と規定しています。
東京地方裁判所・平成3年3月8日判決は、原状回復を認めています。
【質問】その裁判で違反した人は、どのように反論したのですか。
【答え】その裁判で違反した人は、この門扉は古くなって汚れたり、一部破損したりしているし、内部も丸見えであるので、住居の平穏が認められず不安であること、また駐車場が解約となって庭の一部を駐車場として使う必要があったとして、
(1)原告らの主張は権利の濫用である。
(2)区分所有法第17条第2項の「特別の影響」を受けるからAさんの承諾を必要とする。
と反論しました。
しかし、この反論について東京高等裁判所の判決は、
(1)について、他の共有者の意思に反して、集会の決議を経ず行った行為は違反行為であるから、その違反行為の排除を求めるのは権利の濫用にはならないと判示しました。
(2)については、「特別の影響」を受ける場合とは、この変更行為の必要性とか有用性とか、合理性についてAさんが受ける不利益と他の区分所有者の受ける不利益などを比較して判断すべきであるから、Aさんは「特別の影響」を受ける場合に当たらないとAさんの主張を退けました。