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動物の飼育について(その2)

2009年5月2日

  • 筆者 弁護士 田中峯子

【質問】私はAマンションを購入しました。中型犬を飼っていたのですが、なかなか犬が飼育できるマンションはありません。たまたま犬の飼育について規約で禁止されておらず、手頃な値段の中古マンションが売りに出されていると知り、買いました。

 ところが、入居して1年もしないうちに総会で規約が改正され、犬の飼育禁止の条項が加えられたのです。このようなことは許されるのでしょうか。

【答え】Aマンションが新築分譲されるとき、犬の飼育は許されると宣伝されていたのでしょうか、つまり犬の飼えるマンションとして売り出されたのでしょうか。

【質問】規約の改正のとき、理事長は総会でAマンションの新築分譲時には規約で動物飼育について禁止条項はなかったが、『入居案内』には『ペットの飼育禁止』が書かれていたと説明されたのですが、私は中古で購入したので新築分譲時の『入居案内』は見ていません。私と同じように知らないでAマンションを購入し、犬を飼育している人もいます。犬とはどうしても別れられないので、どのように理事会と闘えばよろしいでしょうか。

【答え】マンションは多数の人が住む集合住宅であるので、自分ではとても愛している犬であっても他の人が可愛いと思って認容するかどうか、また犬嫌いな人もいるため利害が対立します。特に犬嫌いな人は、共同生活を送る共用部分(廊下、エレベーター、入り口)で犬と会うと嫌だといいます。犬の飼育を事実上許しているマンションであっても、正面入り口、エレベーターを犬には使用させない約束になっていたりします。

 しかし、あなたは中古でマンションを買い、その時の規約に犬の飼育禁止条項はなかったのですから、後日改正された規約については不満、不服が大きいと思います。

 後日作られた規約で犬の飼育が禁止となったマンションで、改正前から飼育していた犬には効力は及ばないと規約を無視した人に対し、管理組合が横浜地方裁判所に裁判を提起した事件がありました(横浜地平成3.12.12判決)。

【質問】その結果はどうなったのですか。

【答え】その判決は、『現在の我が国の社会情勢や国民の意識から考えると、改正した規約での犬の全面禁止は相当の必要性、合理性が存在する』と判断しました。

 この判決文のように抽象的に「社会情勢や国民意識」という言葉から考えますと、年代の推移によって犬の飼育の是非が変化するのではないかと考えます。

 例えば、現在、ご高齢の方がいつまでも元気で過ごせるようにとペットを飼う人が随分増えています。そうすると、社会情勢や国民意識は変わっていくのではないかと思います。笑えない話ですが、ある15戸のマンションでは、規約でペット禁止になっているにもかかわらず、11戸が犬を飼育しているそうです。どう対応すべきか回答に苦しみます。

 また、同判決は、飼育禁止となって犬の飼育者の受ける不利益は、「社会生活上受忍すべき限度を超えていない」と判断しました。これは犬の飼育者が犬を飼えない苦しみは耐え忍ぶべき限度内であるという意味です。

 この事件の第二審の高等裁判所も最高裁判所も、結論は、後日変更された規約でも大多数の人々の賛成を得た規約であり、マンションは密着性の強い共同生活を前提としているので区分所有者はこれを守るべきであると第一審と同じ趣旨の判決をしています。

【質問】しかし、犬の飼育について、十分注意をして迷惑をかけないように飼育している区分所有者にとっては許されるべきではないのでしょうか。

【答え】上記判決及び他の同様な判決文から考えますと、具体的に迷惑を他の区分所有者に及ぼさないという実質的な反論はとり入れられていません。

(1)ペットは飼い主の主観によるので、すべて愛玩されるものばかりではないこと

(2)糞尿の問題、臭気、病気の伝染、鳴き声、咬傷事件があり、他の区分所有者に不快感を与えること

 などをあげ、区分所有者の中には動物に対し嫌悪感を感じる人もいるから、実質論を論じるのではなく一律に禁止すべきであると判断されているのです。

【質問】しかし、規約を改正するとき区分所有法第31条1項で、ある区分所有者に「特別の影響」を及ぼす場合、承諾を要すると規定されています。

 私のような犬が家族の一員である場合、「特別の影響」を受ける者に該当しないでしょうか。

【答え】「特別の影響」を受ける場合とは、改正によって影響を受ける不利益が受忍すべき限度を超える場合をいい、耐えられる範囲であれば「特別の影響」を受けるとまでは言えないとのことであります。したがって、同じ犬であっても盲導犬であったり、自閉症の治療のための犬であれば耐えられる範囲外と言えるでしょう。

 つまり、マンションは何度も申しますように共同生活であり、規約で生活のルールを規定していかないと、全体が円満な状態にはならず、一人一人が少しずつ我慢をすることが必要である住居なのです。

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