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水漏れ事故

2009年6月27日

  • 筆者 弁護士 田中峯子

【質問】私のマンションはすでに築20年になります。今まで洗濯機の排水ホースが排水管から外れていたために階下に洗濯の排水が流れて大事故が起こったりしました。このような場合は個人責任だからということで、洗濯水を溢れさせた人が階下の人の損害を賠償しました。

 しかし、今度は大変なことが起こりました。3階のAさんの台所の排水管が3階と2階のコンクリートスラブに穴をあけて2階Bさんの天井板の間に配管されていたのです。その排水管が腐食してAさんの排水がBさん宅に流れ落ちて大騒動になりました。

【答え】それは大変なことですね。築20年〜30年のマンションはそのような施工がなされていることが多いようです。これは個人の専用管であるからAさんの専有部分であると考えられがちです。つまりこの排管は専有部分と考えられるか、全員で責任を持たなければならない共用部分と考えるかが問題となります。ことに排水管からの漏水であるため、衛生上の問題もあり、階下の居宅の天井板,床板,敷物等の消毒からはじめなければならず、階下のBさん家族はしばらく住めないためホテル代なども必要となります。

【質問】そうすると、この排管を専有部分の物と考えるか共用部分の物と考えるかによって、Bさんの損害を誰が補償するかを決めることになるのですね。私のマンションの規約に専有部分と共有部分の分類が書いてあるのですが。

【答え】そうですね。それぞれのマンションの規約に専有部分と共用部分との区別は書かれているのですが、本件のような場合についてどう理解し、どう解釈するかまでは書かれていません。

 多くのマンションの規約は、共用部分として(1)敷地、(2)玄関,ロビー,廊下,エレベーター,階段など全員で使用できる部分、(3)建物の基本的構造部分、(4)建物の付属部分として水道,ガス,排水の各配管などが書かれていると思います。

 特に(4)の各配管については、どこまでが共用部分であるかについて詳しくは書かれていません。

 しかし解釈として、パイプスペースにまとめて入っている縦管が共用部分で、そこから専有部分に引き込まれている横引き管は個人の所有で、個人が管理すべき専有管であると考えられていました。ところが本件のような敷設の仕方をした排水管の問題が生じて来ました。汚水管(トイレ)も同様な施工をしてあるマンションもあり、漏れて大変な問題となりました。

【質問】それは大変なことですね。基本的に建物の中で専有部分と共用部分を区別する理論はないでしょうか。

【答え】専有部分の内装的部分、つまり上塗り部分が専有部分であって、他は共用部分であると考えられています。標準管理規約7条も上塗り説をとっているといわれています。そのように専有部分はせまく理解されているのです。

 そう考えるとすると、何か問題が生じた場合、つまり建物の件で被害が発生した場合、工作物の欠陥(マンションの建物の欠陥)は区分所有者全員の責任、または管理組合の管理が不十分、つまり管理に対して故意、過失によって損害が生じた場合では、管理組合の責任となります。

【質問】なかなか難しい問題ですね。でも私のマンションのように専有部分でもない場所、つまり3階のスラブ下の排水は一体誰の責任になるのでしょうか。

【答え】最高裁判所(平成12年3月21日判例)は、汚水配管が上階の床下にある躯体部分であるコンクリートスラブを貫通して、その階下の天井裏に配管されていたものが本管(縦管)に流される構造になっていたところから漏水した件について、『上階から本件排管の点検、修理を行うことは不可能であり、これをするには階下の天井裏に入ってこれを実施するほか方法はない。したがって、この排管は専有部分に属しない建物の附属物にあたり、区分所有者全員の共用部分にあたる』(概略)旨を判示しました。

 つまり、損害金は上階の人の個人負担ではなく、区分所有者全員の負担との判断になります。

 区分所有法第9条に「建物の設置又は保存に瑕疵(かし)があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する」という規定があるので、一つの救済にはなると思います。

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