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The theme of the week
 世界のビックリハウス!
fromペルー・飯尾響子
未完成のアパートから人声が…

このアパートは5年ほど前に「カスコ販売」を始めた。が、売れたのは下2階分だけ。上階には、ガラスのない窓が黒々と口を開けている
 どこの国でも、アパート(マンション)は建物全体がきれいに完成してから住人の入居が始まるものだと思う。未完成の、まだ上階には窓ガラスも入っていないようなアパートから深夜に人の声が聞こえたり、窓辺に人影が見えたりしたら、ふつうそれは怪奇現象だ。しかしリマではよくあることなので、びっくりしなくても大丈夫。特に、あまり資金のない建て主がつくったアパートでは、しばしば観察されるありふれた現象である。

 というのも、当地の資金不足の建て主たちは、ぎりぎりの費用でアパートの大枠だけ完成させると、そのまま堂々と売りに出してしまうのだ。床、壁、天井、それに最低限の配線、配管は済んでいるが、窓も扉も蛇口もなく、壁や床はコンクリートを流したままという状態での販売である。

 当地では、これにちゃんと名前までついていて、「カスコ(骨組み)での販売」と呼ばれている。カスコというのは、もともと頭蓋骨やヘルメットを指す言葉。意味といい、カスカスした語感といい、がらんとした半完成アパートには実にぴったりだ。

 「カスコ販売」の手順は、こうである。まず「超お買い得、カスコ販売してます!」という大きな張り札を出す。そして、たとえば1階に買い手がつくと、建て主は受け取ったばかりの頭金で大急ぎで1階の窓や扉、水まわりの工事を済ませ、買い主に引き渡す。あるいは、もし買い主が希望すれば、仕上げは買い主に任せることにして、もらった頭金は2階の仕上げに回せる幸運な場合もある。そうして1軒分ずつ売っては完成させ、売っては完成させ、を続けるわけである。

夜になると、これこの通り。下の階だけ明かりがともり、カーテンすら入っていない上階は真っ暗なまま
 こういうアパートを買って、まっさきに入居した場合、1棟全体がきれいに完成するまでいったい何年かかるかは神のみぞ知る、である。あちこち窓も入っていない空き部屋だらけのアパートなんて、廊下はいつもホコリだらけだろうし、家相上もいかにもまずそうだし、またもし隣近所が売れたら売れたで、今度は仕上げ工事の騒音に悩まされることになる。

 あまりいいことはなさそうな気がするのだが、しかしそんな「カスコ販売」のアパートを好きこのんで探して買う人は、リマにはいくらでもいる。未完成のぶん割安な値段で買って、内装を一から自分好みのものにできるとか、欠陥住宅はカスコの段階のほうが見破りやすいとか、あるいは資金難で困っている売り主にはちょっと圧力をかければお得な一括払い価格が引き出せるとか、それなりの利点もいろいろあるようだ。

    ◇

 「世界のウチ」は、世界各国在住のライターたちの集団である「海外書き人クラブ」によるリレー連載でお届けします。当面のテーマは≪世界のビックリハウス!≫。どんな変わった家が紹介されるか、お楽しみに。 (2004/05/08)













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