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The theme of the week
 よりどり間取り
fromペルー・飯尾響子
アンデスのワンルーム・ハウス

 アンデスでは、標高4000メートルをゆうにこえる高地でも、たくさんの牧民農民が暮らしている。ペルーは赤道に近いので、それだけ標高があっても、日中は意外なほど暖かいが、夜の冷えこみはやはり格別だ。しかも森林限界を超えているため、暖をとる薪(まき)の入手はむずかしい。わずかな低木の枝を集めたり、牛のフンを自然乾燥させたもの(要は牧草の繊維のかたまり)まで燃料として使ったりしているが、酸素も少なく、大きな火力はとても得られない。そこで、アンデス高地の家の間取りは自然とどこでも「効率良く暖をとること」をいちばんに考えた作りとなっている。

アンデス高地の家(プーノ地方)。まわりの家畜囲いのほうがずっと大きい
 まず寝室については、狭い一室に、家族みんなが集まって眠る以上の名案はない。また苦労して集めた燃料は、煮炊きだけでなく、部屋暖房の役も果たすことが望ましい。とすると、寝室と台所、居間のすべてを同じ部屋にするのが一番だ。そんなわけで、アンデス山岳部の家のほとんどが、窓の少ない、狭苦しい一室だけの間取りとなっているのも、無理もないことなのだ。土地はたくさんあるし、建材は無料に近い日干しれんがだから、お金がないせいで家が狭いわけでは、決してないのである。

 家族みんなが日夜寄り添って過ごす暮らしは、都会から見るとうらやましい面もある。でもどうしても犠牲になるのが、家族それぞれのプライバシー。両親の場合、たまーに2人だけで語らいたいときは子どもが寝静まるのを待てばいいが、逃げ場がなくてしんどそうなのは思春期の子どもたちだ。静かに物思いにふけったり、恋人とおしゃべりをしたりしたくても、自室などないからすべては青空の下でということになる。しかし、表には必ずおせっかいなご近所さんの目が光っているというのは、広大なアンデスでも事情は同じである。

 一方の日本は、小さな子でもカギつき私室を欲しがるご時世だが、ほんとは子どもというのは、プライバシーを少し踏みつけにされるくらいのほうが、自立心が高まっていいのかもしれない(などと、実家の私室で30歳までのうのうとパラサイトしていた私は、身にしみて思う)。現に自室なしのアンデスの子どもたちは、ほとんどが10代の間にさっさと自分で相手を見つけて結婚し、堂々と一家を構えるようになるのだ。

 独立の直接のきっかけは「プライバシーのないワンルームハウスからの脱出」という若者らしい理由だったとしても、彼らはすぐに堅実なアンデスのパパやママになる。はたちそこそこで、よちよち歩きの長男長女の手をひき、末っ子を背負い、「この国では、働いて一家を支えてなんぼですからね!」と語るアンデスの若者たちの表情は、都会では決して見かけないりりしさに満ちている。

窓のない、アンデスの典型的なワンルームハウス(アレキーパ地方)台所兼居間の様子(ティティカカ湖、タキーレ島)
(2004/08/17)













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