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The theme of the week
 防犯、防災、そして防虫
fromフィンランド・大久保慈
オオカミから身を守るには!?

 「もうひとつのヘルシンキ」と題した写真集がある。私の気に入っている本だ。

 この本はヘルシンキの都心部の建物の中庭の写真を集めたものだ。たしかにヘルシンキの建物には必ずといって良いほど中庭がある。住宅ならそこにはたいてい、ごみ収集の箱や自転車置き場、カーペットを干すさおなどがある。中庭に通じる門は昼間はたいていの場合は開いているので、ふらっと入ってのぞいてみることもできる。通りに面した側と中庭側の建物の外壁の色が全く違っていたり、公園かと思うような庭が作られていたりと、外見からは想像もつかないような空間が広がっているのがおもしろい。

 
1786年建立の農家。フィンランドの建築家アルバ・アールトも絶賛   1820年ごろに建立。母屋のほか納屋、サウナ小屋などの建物で中庭を作る

ヘルシンキ中心部のアパート入り口、中庭へ通じる門

 ただし夜になると、その中庭への門は閉じられて部外者が侵入することはほぼ不可能だ。アパートやマンションのドアを隔てた玄関先まで知らない人がうろうろできる日本のアパートと違って、アパートの中庭へ通じる門、階段室のドアと鍵がなければ玄関のドアまではたどり着けない。アパートの門が閉まった時間に内部にいるのは、住人やその知人など顔見知りの人だけだから、不審者がいたらすぐにわかるのだ。

 めったに大きな事件が起こらない、夏のバケーション時期のある日のニュースが「水族館のくらげが子どもを産んだ……」ということくらいだったりするような、ものすごく安全と言っていいような国でも、女性の一人暮らしである筆者にとってとても安心に感じるのだ。

ヘルシンキには珍しい円形の中庭。ちなみに道路側はごく普通の四角い形

 中庭は、フィンランドでは古くは18世紀ごろの農家の典型的な配置に見られる。森の住民であるフィンランド人の祖先は、家畜や家族を野犬やオオカミから守るためにこの形を選んだ。フィンランドの冬は寒く厳しい。風が吹くと体感温度は一気に下がる。中庭にいれば寒空の下凍りつくような風にさらされなくてすむ。

 フィンランド現代建築の巨匠である建築家アルバ・アールトも、その形と機能性を絶賛し、自身の最高傑作といわれるマイレア邸に再現している。森の中の小屋に設けられた空間は時の流れの中で受け継がれ、発展して今でも都市型アパートで中庭がつくられている。古くからの防災の知恵が今に生き、そして実際に安心感を感じるのだと思うと感慨深い。 (2004/09/18)













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