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薪を置いたり子羊を遊ばせたり、いろいろ気楽に使える土間 |
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かわいらしいクイたち |
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クイのために、こんな豪邸を作ってやる人もいる |
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でも結局は、揚げて食べるのだが |
from ペルー・リマ在住 飯尾響子 所変われば、家変わる
ペルーの各家庭の床は、全国平均で土間25%、コンクリート敷き54%、フローリングやタイルなど上等な仕上げをしたもの18%、なのだそうだ(1999年の全国調査による)。20世紀のおわりに4軒に1軒が土間だった、というのはインパクトある数字だが、21世紀の今も、この数字はあまり変わっていないはずである。
というのも、農業と放牧にたずさわる人が多いアンデスやアマゾン地方では、土間の家のほうが使い勝手がずっといいからだ。突然の雨のとき、わざわざ家畜小屋まで走らなくても、そのへんのニワトリや羊をさっと家に入れてやれるし、収穫期には重いジャガイモやトウモロコシの袋を運ぶのに、外の地面と高さの差がない土間はとても便利だ。また汚れたときは、土を入れかえればいいのだから、手入れもしやすい。
それだけではない、どうしても土間がないと困るという慣習が、アンデスでは広く行われている。それは、テンジクネズミとの同居である。あまりネズミ的ではないのに、なぜ日本で「天竺ネズミ」というのかわからないが、クーイクーイと鳴くので、当地ではあっさり「クイ」と呼ばれている。要は大きなモルモットのような、かわいらしくておとなしく、飼育に手のかからない動物だ。クイはほかの家畜や人間には何も悪さはしないし、エサは畑の青麦などやればいい。また部屋の隅に物陰があれば、そこでどんどんふえもする。
しかしアンデスの人は、このかわいいクイをペットとして飼っているわけではない。お祭りの前日、一家の奥さんはよく太ったクイを選び出し、あくる日のメーン料理「クイ・フライ」の準備をはじめる。クイの肉は上品な鶏肉に似てとてもおいしく、アンデスではいちばん豪勢なごちそうとみなされている。生き残りのクイたちは、仲間の悲しい運命を知ってか知らずか、奥さんがクイを揚げるかたわらで、か細くクイクイと鳴くばかりである。
そんなふうに、人間にとってたいへん都合のよい同居動物なのだが、ひとつだけ問題がある。もしもペルーでクイのようなつぶらな瞳の娘と知り合っても、決して「あなたはクイみたいだ」などと口走ってはならない。それでは「あなたは年中、所かまわずおしっこしているね」と言ったことになってしまう。そんなだから、クイをフローリングやじゅうたんの部屋で飼う人は絶対にいない。自家製のクイ・フライを心おきなく楽しむには、何はなくとも土間が欠かせないのである。