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かわいいかわいい子ブタちゃん |
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ぼちぼち食べごろに育ったブタ |
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チチャロンその1。皮のパリパリ揚げ |
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チチャロンその2。お肉のから揚げ |
ペルー・飯尾響子 あっと驚くアウトドア
芝刈りリャマは、広い土地がないと飼えないぜいたくなアウトドア・ペットだが、うんと経済的なアウトドア・ペットもいる。それがブタだ。アンデスの家々ならもちろん、首都リマでもちょっと庶民的な地区なら、裏庭でブタを飼っている人はいくらでもいる。何といってもブタは、四つもの大役を果たしてくれるのだ。飼う人が多いのも大いに納得できる。
第1の役割:ペット。
かわいい子ブタ時代は本当にかわいらしいので、家の子どものよい遊び相手になる。
第2の役割:生ごみ処理。
生ごみはリマの家庭でも悩みのたね。生ごみがにおいはじめる前に、手っとり早く消滅させる一番の方法は、やはりブタしかないだろう。ブタはじつに大食いで、少々鮮度がおちた生ごみでも、あるいはブタ肉の残りが交じっていても、平気で食べてくれる。だから育つにつれて家の生ごみだけでは足りなくなり、その結果、近所のごみ捨て場にブタの放牧に行く人が後を絶たず、非衛生的ではないかと社会問題になっているほどだ。しかしこのブタの食欲のおかげでペルーの生ごみがかなり減っているのは、動かぬ事実である。
第3の役割:解剖学の教材。
こうして日々人のために尽くしてくれるブタだが、人間とはつくづく無情なものである。必ずいつかは食べられてしまう日が巡ってくる。そして子どもたちは、一度はペットとして愛した日もあったブタ君のおかげで、人生最初の鮮烈な解剖学の手ほどきを受けることになる(ブタ解体写真の掲載は自粛します)。
第4の役割:チチャロン、つまりブタのから揚げになること。
ペルーでは、自分より格段にお金持ちの恋人ができると、こう陰口をたたかれる。「あれはね、『チチャロンへの愛』だよ」。ブタへの愛があるわけではなく、ゆくゆくチチャロンが食べたいからブタをかわいがっているだけ。つまり恋人が好きなのではなく、その人が持っているお金だけが目当て、という意味だ。
こんなことわざがあるくらいだから、すべての飼い主の目にブタが最初から揚げものの姿で映っているのは間違いない。けれどブタはそんなこととは夢にも思わず、毎日飼い主からごちそう(生ごみ)をもらい、裏庭で安心しきって、のんきなアウトドア生活を満喫しているのだ。なんと悲しい物語ではないか。