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我が家のリビングルームに鎮座している「天井アート」 |
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アーティストが受け取るのはこのような状態のパネル。塗られたペンキを少しずつ削りながら研磨 |
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今も残る金属製パネルの張り巡らされた天井 |
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ペンキを何層か残し、レリーフ模様をきれいに浮かび上がらせる |
アメリカ・西村久美子 インテリアっていいじゃない?
古く美しい建築物が、老朽化を理由に取り壊されたり現代的な全面改装を施されたりすることを憂う人は多い。
筆者もそのひとりであり、細かい職人芸や高品質の木材をふんだんに使った質の高い古い建物をこよなく愛している。それゆえに、古い家を買って自力で改装工事をするものの、家が建った時代を象徴するような構造やレリーフは、極力そのままの形で残すように努力をしている。
一昨年の夏、1人のアーティストに出会った。私の住む町で毎年行われる屋外でのアート・フェスティバルに参加していた彼女は、小さなテント一つにわずか20点ほどの作品を並べていたのだが、私はそのテントにおそらく1時間弱いたのではないかと思う。
古い建物は天井が高いことが多いのだが、その天井に細かいレリーフの入ったブリキ、銅、あるいはスチール製の板が張り巡らされているのをご覧になった方も多いのではないか。これらは、その当時高価とされていた職人によるしっくい、石材、木材性天井レリーフの廉価版、もしくは輸送の便利な大量生産版として19世紀半ばから北米を中心に普及したものとされている。彼女は、取り壊されていく建築物の解体現場に赴き、天井のブリキ材を引き取っては、それをアートに生まれ変わらせているのだ。
彼女はいまだ古い建物が多く残るピッツバーグの出身で、この「天井アート」を作り始めた頃は、こうした解体作業が多く行われていたという。その美しい模様に魅せられ、自宅のガレージへ持ち帰り、何層にも上塗りされたペンキをところどころはがして磨いているうちに、「これを使って写真立てを作ってみたいな」と大工仕事の得意な父親に木材でフレームを作ってもらったことから、彼女と彼女のお父さんとのビジネスが始まった。
言ってみれば、油絵のキャンバス地の代わりに、木材で作ったフレームにペンキを削って研磨したブリキ板を張っていくだけの作業だ。ブリキ板のレリーフの特徴を生かし、壁掛けにしたり、鏡のフレーム、写真フレームにしたり、またはろうそく立てにしたり。古いブリキの鉛色と、何十年もかけていろいろな人が重ね塗りしたペンキのグラデーションが、アンティークなレリーフ模様を引き立てている。
彼女によれば、新しいブリキ板では、同じような趣が出ないのだという。何層ものペンキが何十年もの時をかけて完全に乾いていないと、きれいに研磨ができないそうだ。最近になって古い建物を保存していこうという意見が再熱したおかげで、彼女の元にはなかなかこのアンティークのブリキ板が流出してこないのだという。彼女は「それはそれで、私はうれしいのよ。古い建物が取り壊されていない証だものね」と笑う。
私はこのときに買った彼女のアートをリビングの一等地ならぬ一等壁に飾った。「何十年もいろんな人の生き様を見てきた天井かぁ」と考えながら眺めると何だか緊張してしまい、我が家のリビングで突如として挙動不審になってしまうのであった。