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ロサンゼルス流ロハスな家

2006年10月04日
アメリカ・ユカリ・トラビス  素敵なスローライフ

 ロハスという言葉はアメリカで生まれたらしい。Lifestyles of Health and Sustainabilityの頭文字をとるとLOHAS。つまり健康や地球環境に気を遣い、無駄な消費をしないというのがロハスな暮らし方であるようだが、ロサンゼルスに住む私の周辺は「ロハスなぞどこ吹く風」といった雰囲気だ。大型SUV車が走り回る道路の脇には、まだ新しい家具や家電製品がポンと捨てられ、“もったいない”などという発想をする人はまず見かけない。なにしろロサンゼルスはあの世界的なファストフードチェーン発祥の地。スピード重視の消費型ライフスタイルが染みついた街なのだ。

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この家が建てられたのは1910年。つまり今年で築96年だが、外観からはさほど古さは感じられない

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すっかり改装されたキッチン。新しい家に比べると寝室は狭いが、その他の部分は引けをとらない

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付近にはよくメンテナンスされた古い家がたくさんある

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「クラフツマン(Craftsman)」とよばれる20世紀初頭に流行したスタイルの家も多い

 ロハス提唱国の都市としてはお恥ずかしい限りだが、実はそんなロサンゼルスにも一つだけ「おっ、こいつはロハスかも」と思うことがある。それは古い家がとても大切にされているということだ。「なあんだ、そんなのヨーロッパじゃあったりまえよ」と言われそうだが、あちらのように石造りのがっしりした家が保存されているのとは訳が違う。ここでは「なんじゃ、こんなボロ屋」と言いたくなるような何のとり柄もない木造家屋が丁寧に修繕され、年々資産価値を増しているのだ。

 不動産屋のホームページでダウンタウン付近の旧市街地の物件を検索すると、築80年などはざらで、築100年を超えた家がぞろぞろ出てくる。ロサンゼルスが大都市になったのは1880〜1930年ごろだから、これらの家は街が生まれた頃に建てられ、そのまま今に至っていることになる。ロサンゼルスではよっぽどの郊外でもない限り「家を買う」とは「中古物件を買う」の意。古い家を壊して新築する人などめったにいないので、一度建てられた家はそのまま残っていく可能性が高い。

 昔、夫が住んでいた家も築100年を超えていた。いつもどこかが壊れているガタガタの家だったが、ある日、カーペットの下のビニール床材をめくってみてびっくり。出てきたのは細い木を丹念に敷き詰めたハードウッドフロアだった。それを磨き上げると床は簡単にピカピカになり、「昔はこうだったのか」と納得するような落ち着いたリビングルームが姿を現した。

 室内ドアのガラス製のノブもオリジナルではないかと思う。ペンキが塗り重なったドアの角はだいぶ丸くなっていたが、そんな所からも家がたどってきた歳月が感じられた。その家では座っているだけでもなぜか気が休まり、すぐ近くの大通りが別世界のように感じられたものだ。

 こんな古い家は熱効率も悪く、ハウスメーカーが提唱する「資源を有効に活用する自然に優しいロハスな家」なんぞの条件にはとても当てはまらないだろう。しかしまだ使える家を壊して新しい家を建てる時の膨大な資源の無駄を考えると、古い家こそロハスな家と言ってもよいのではないだろうか。

 しかしセレブの派手な暮らしぶりに目をくらまされ、大量消費に走りがちなロサンゼルス住民が、なぜまた古い家が大切にするのか? その答えはたぶんロハスに賛同するからでも何でもなく、「新築するより古い家を修繕した方が安い」からなのだと思う。きちんと直してさえあれば、家の古さは思ったほど転売時の価格に悪影響を及ぼさない。だったら築90年でもまあいいか、とりあえず初期費用を節約しよう、ということになるのだろう。それで余ったローンの枠で65インチのプラズマテレビを買って居間に置き、キッチンには720リットルの最新式冷蔵庫、裏庭には6シートのガーデンジャグジーを備え付けると、いかにもロサンゼルスらしいロハスな家のできあがり? んなわけないか……。

 

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