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「世界のウチ」

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2007年03月03日

スイス・大野エグル瑠衣子  家にまつわるトホホな話

「一軒家を購入しました! 秋に結婚するからぜひ来てね」と友人から招待状が送られてきた。現在、躍起になって引っ越し先のアパートを探している私たちにとっては「一軒家購入」という文字が金色に光って見えた。

写真物件の相場は2DK(50〜70平方メートル)で8万から15万円
写真見に行った物件のバスルーム。スイスではごく普通のサイズ
写真チューリヒ近郊。都市から電車で20分も走るとこんな田園風景が広がる

「夏に引っ越しすることになると思う」と夫から言われたのは昨年の冬。春に住んでいたアパート解約の手続きをして、新しい引っ越し先をぼちぼち探し始めた。私にとっては今回がスイスで初めての部屋探し。日本での大学入学時以来、部屋探しとはまったく無縁の生活を送っていた私は、今考えると随分気楽に構えていた……のが悪夢の始まり。

 インターネットでめぼしい物件を見つけ、早速不動産会社に電話。「○○の△△という物件に興味があるのですが……」と言うと「それじゃぁ今住んでいる人は○○さんですから、彼女に電話してください」と担当者。電話をしてみると「平日は夜まで勤務、休日は家を空けているから、そうね、木曜日の夜8時頃に来てください」と現居住者の彼女。「え??ここから車で2時間の所に、夜8時ぃ?」とブーブー言う私を背に、夫は「ま、そんなもんだよ部屋探しって」とさらり。

 それで、木曜日、夜8時に見に行った。建物の2階にある、キッチン別の3部屋、約50平方メートル、バスタブ有りのバルコニー付き物件。駅から徒歩5分。都市中心部まで電車で10分、光熱費込み、ひと月9万円だから悪くない。「どうですか?」と聞く現居住者に「とっても気に入りました!」と答えた私たち。そしたら彼女、手に白い用紙を持っている。「それじゃ、この用紙に必要事項を記入して、不動産会社に提出してくださいね。だいたいこれまでに60人くらいの人が見に来てるから、早めに送ったほうが良さそうですよ」とにっこり。(スイスでは現居住者が、物件を見学に来た居住希望者に応募用紙を渡すシステムを取り入れている不動産会社が多数。そうすることによって、入居希望者が確実に物件を見に来たことを証明することができるのだ)

 ここ近年、スイスの都市では入居希望者に対して物件の数が極端に少ない、という問題を抱えている。そのため、ちょっとお得な物件で、しかも9月や10月の会社や大学の年度始まり前に部屋探しをする人が増える夏には、1つの物件に対して100人以上の入居希望者が殺到することも稀じゃない。大家が入居者の決定権を握っているスイスの不動産システムゆえ、この100人は入居希望用紙を記入し、宝くじ並みに当選率の悪い中に新居の希望を託すわけである。

 というわけで、その物件を見た夜から1週間後、元々くじ運の悪い私たちは、見事(?)その「悪さ率」を高める返事を受け取った。聞くところによると、不動産会社に勤める友人や親戚(しんせき)がいると、随分と部屋探しは楽なんだとか。もしくは家族用の物件を借りて、他の人と共同生活をするパターン。それだったら結構簡単に見つかるらしい。

 そんな話を聞きながら「困ったわねぇ?」と言う私。その隣で(日本人の私にしてみれば)まだ、たっくさん自然が残っている近辺を頬杖をついて眺めながら、「この辺も建物でいっぱいになったなぁ?」とつぶやく夫。……ま、ぼちぼち探せばいっか。


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