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「世界のウチ」

ゆがんだ壁に囲まれて

2007年03月14日

タイ・増成ヒトミ  家にまつわるトホホな話

 以前、タイ在住が長い日本人と話していたときに、こんな話題が出たことがある。「タイ人って平衡感覚に欠けるのかしら、壁にかけてある絵画や時計のどれを見ても、左右どちらかにちょっとかしいでいるのよね」。それまで、そんなことをまったく気にしたことがなかったワタシだったが、それを聞いてからというもの、外出したときはインテリアを注意して眺めてみることにした。すると、レストランやホテルという場所でさえも、行く先々で目にする絵画は、その人の言葉通り、まっすぐではなく微妙にかしいでいたのである。

写真バスルームの壁のゆがみ。壁だけ見ているとわからないが、バスタブの縁を見ると一目瞭然(りょうぜん)である
写真家の裏手の壁のゆがみ。まさか土地自体がゆがんでいるとは思いもよらなかった

 この言葉を再び思い出すのは、2年半前に購入した中古タウンハウスのリフォームを始めようとしたときのことだ。夫は製図を書くために、巻き尺で室内のあちこちを測っていた。すると、「なんでこんな家を買っちゃったんだろう。壁のあちこちがゆがんでるよ」と、気落ちした声を出しているではないか。我が家は間口が4メートル、奥にずずーっと22メートルある、うなぎの寝床タイプのタウンハウスである。タイの一般住宅は、赤れんがを積んで、その上にコンクリートを塗り固めて壁を作るのだが、どうやら我が家の壁は直線ではないらしく、左右の壁それぞれに数センチのぶれができていたのだ。両側の壁は、隣家と共有しているので壊すわけにはいかないが、その他の壁はリフォームするときに作り直せばいいではないかとその場を収めたのだが……。

 完成間近になって家のあちこちを点検してみると、ワタシも夫も卒倒しそうな事実が待ち受けていた。2階の大きなサッシ窓のある壁は直線ではなく、大きな「ヘ」の字になっていたり、バスルームの四方の壁は直線ではあるものの、どの四隅も90度ではなく東西南北にゆがんでいたりという有り様だった。極めつきは、家の裏手の壁が大きく斜めにゆがんでいたこと。工事を請け負った業者に文句を言うと、「土地がもともとゆがんでいるんだよ」と指摘され、あわてて土地の権利書を見ると、なんと我が家の土地は大きな台形をしているではないか! ゆがんでいるのは屋内外の壁だけではなかったのだ。

 家の購入とリフォームに散財したワタシたちは、ゆがんだ壁を直す費用を捻出(ねんしゅつ)できるはずもなく、覚悟を決めてそのまま住むことにした。ところが、実際に生活を始めてみると、壁のゆがみというのは意外に気にならない。四六時中壁を凝視しながら毎日を送るわけではないからなのだ、とは言いつつも、バスタブに漬かりながらふと周りの壁に目をやったり、サッシ窓の掃除をしているときなどは、そのゆがみがふと目に飛び込んできて、ワタシは急にご機嫌斜めになってしまうのである。


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