PR 住まいの最新情報お父さんが遍在する家2007年05月16日 ペルー・飯尾響子 住育―子どもを育てる家
リマ市の中流家庭には、どうも一般に、すなおでおっとりした子が多いように思う。そこに一役買っているのが、お父さんがどこにでも出没する、当地の家のありかたなのかもしれない。
日本ではペルーのことを、ラテンらしく男尊女卑のお父さんばかりいる国、と誤解している向きも多いようだ。でも本当は、「家族にうまく持ち上げられて、『我こそは家父長なり!』と良い気分になっているお父さんが多い国」と言うほうがより正確である。周囲を見回しても、お母さんの掌(たなごごろ)の上でふんぞりかえる、おめでたいお父さんばかり目につく。 けれどそんなお父さんたちに共通しているのが、顔を立てられているわりに、家の中に決まった居場所がない、ということだ。たとえお父さん用の書斎があったとしても、そこでひとり読書にいそしむパパなんて、リマでは見たことも聞いたこともない。かわりにいつも家族の誰かれにへばりつき、家じゅうの部屋部屋をチェックして歩く、妙にひまそうなパパが多いのだ。 そこはそれ、一応顔は立てられているお父さんだから、ずかずかと思春期の娘の部屋に入りこみ、かわいい花模様のベッドカバーの上にどかっと座って、「さいきん学校はどうだい?まさか男子生徒から、付け文なんぞもらってやしないだろうね?」などと不穏当な質問をしても、娘のほうは大していやな顔もしないで、優しくかまってあげている。それどころか、家庭の実権をにぎる母の目の届かないところで、お父さんに甘えてお小遣いをねだる絶好の機会、とばかり、お父さんの侵入を歓迎しているふしすらある。 もちろんリマでも、子どもが引き起こす諸問題に悩む人はたくさんいる。でもそんなときも、親類縁者すべてにご近所さんまで巻き込んで、この世の終わりのような大騒ぎをしたあとは、すぐまたけろっと仲良し一家に戻ってしまう。かような芸当ができる背景には、こうしてお母さんだけでなくお父さんまでが、年じゅう子ども部屋に入りびたって培ってきた、緊密な人間関係があるのかもしれない。 私自身、そんな家で育ちたかったとは、正直夢にも思わないが、けれどリマのある自称マチストなお父さんの次の言葉には、だいぶ考えさせられた。 「家族とは本来、お互いうっとうしく干渉しあうもの、それによって絆(きずな)が深まるもの。特に親もとで暮らしているあいだは、子どもには秘密を持つ権利などありません。もしそれがいやなら、自分が大人になったとき、独身で通すなり、子どもを持たないなり、自由の多い暮らしを選べばいい。でも私のように親になった以上は、子どもがもう1人で大丈夫というときがくるまで、とことん干渉し続けるつもりですよ!」 世界のウチ バックナンバー
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