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「世界のウチ」

美味なるものはガレージから

2007年10月06日

フランス・小笠原めい 華麗なるガレージ

 フランスの家で「オイシイ場所」と言えばガレージであろう。20年間も洗車をした事のないような、ボロ車プジョー104あたりが入っていてもがっがりしてはならない。ガレージの中で価値あるものは車ではない場合がかなりある。

写真ダンナ様は街の電気職人さんなので、ガレージも立派。中には車2台に様々な工具がいっぱい。
写真毎年2月、ガレージは鴨さんに占拠される。並んだ、並んだ、鴨さんたち。さっきまでは首付きだったのに・・・
写真この道40年? 鮮やかに鴨を切り分ける。「捨てる所は何も無い!」腸も掃除してパテに入れる徹底ぶり。
写真年季の入った「ヘンゼルとグレーテル鍋」。後方にはワインストックがちらりと見える

 フランスは言わずとも知れた「ワイン大国」。小さな町のしょぼいスーパーマーケットでさえワイン売り場は日本のデパ地下のそれよりも魅力的だ。レベルの差は雲泥だが、各家庭のワインストックもなかなかのものである。しかしフランスの家屋に地下室が標準でくっついているわけではなく、地下ワイン貯蔵庫がない家ではガレージがワイン置き場となる。

 さて、そのガレージだがアニーの家では年に数回、車を追い出して調理場に早変わりする。アニーの住むフランス西南部はフォアグラの名産地。「強制的に過食をさせ、肝臓を肥大させる」世界3大珍味のアレである。美しい田舎道を車で走れば、あちらこちらに鴨やアヒルの愛嬌たっぷりの姿を見かけ、その姿を見なくなり寒さを身にしみて感じるころ、市場には立派なフォアグラが並ぶ。

 現代でこそ冷凍パックで年間を通して手に入るフォアグラだが、かつては素材の傷みにくい冬に大量に調理をして保存しておくのが常であり、今でもこの地方の人々は2月になると一斉に鴨に取り憑かれる傾向にある。

 これらフォアグラや鴨肉を使って作る料理は母から娘に代々受け継がれてきた家庭のごちそう。「保存食」というより「作り置きのできるおもてなし料理」と言った方がイメージに合う。しかし、往々にしてその量と来たらお台所で上品に作るような代物ではない。「不意のお客さん用に」の一言で鴨10羽、砂肝10キロ、フォアグラ4キロに豚ひき肉を8キロ。不意の客が大食漢なのか、不意の客が頻繁に来るのか謎であるが大体これがアニーが用意する1年分の量だ。

 「ヘンゼルとグレーテルの魔女鍋」さながらの大きな鉄鍋や地面にどっしり置く無骨なデザインのガス調理器具、たらいのオバケのような煮沸消毒鍋、など場所を取る調理器具を用意し、彼女のように「広くて涼しい」ガレージで調理をする人は珍しくない。

 この郷土料理保存食作り大イベントの2月以外にも、夏のジャム作り、秋のキノコの瓶詰め作りに魔女の大鍋は大活躍し、ガレージの棚には種類豊富な保存食品がストックされていく。そう、ガレージの車の後ろには膨大な量のフレンチグルメが隠されているのである。


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