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「世界のウチ」

ハンパじゃないぞ、フレンチ盆栽野郎

2007年10月31日

フランス・小笠原めい 海の向こうのジャパネスク

 今年30歳になる柔道家のロラン君、子供の頃は「北斗の拳」のアニメに夢中になり7歳上の兄相手に「お前はもう死んでいる」とチョッカイを出しては逆に泣かされていた。彼にとっての「ニッポン」は「アニメと漫画」であり、「柔道」であった。

写真玄関前の盆栽コーナー。バカンス中はこれらがみんな「大移動」する
写真階段の下の空間に作った「トコノマ」。なんちゃって、だけど許しましょう
写真お道具一式。インターネットで取り寄せたり、盆栽専門店で購入したり
写真ご自慢の盆栽とニコパチ。「ボクはまだまだアマチュアだけど……」と謙虚なロラン君

 そのロラン君が5年ほど前からハマっているのが「盆栽」である。フランスでは「ボンザイ」と発音される「盆栽」、ここ数年ですっかりフランス社会に浸透した印象を受ける。パリはもちろん、地方都市の園芸店や大型スーパーマーケットでも売っていて、月並みな花束よりはヒネリの効いた手みやげを好む人や、ZENなインテリアアイテムを求める人が買って行く。

 ロラン君の「盆栽熱」は買い求めるだけでは飽き足らず、自分で盆栽を育てるに至る。彼の家には大小30の盆栽があり、毎日のお手入れは欠かせない。奥さんのセリーヌには「食べられないし、花もないし、場所は取るし」といたく不評だが、そんな小言はどこ吹く風、玄関横に盆栽棚をデン!と設置している。

 バカンスともなると、ママンのお家まで約20キロの距離を2往復して手塩にかけた盆栽たちを運ぶ。「これは朝と夜に水をやる事」「これは3日に一度」と細かく指示をして、バカンス先からも「ボクの盆栽は元気?」とチェックの電話を入れる徹底ぶりだ。ママンは「盆栽の世話より、はやく孫の世話をさせてちょうだいよ」と嘆く。

 目を細めるくらいの出来栄えに育った盆栽は彼が室内に「自作」した「床の間」に置かれる。石造りの暖炉あり、可愛らしいプロバンス風のキッチンあり、色鮮やかなソファーありの「典型的はフレンチ若夫婦のお宅」の中でこの「床の間」、そこだけ唐突にジャポネスク臭を放っている。ともあれ、空の花瓶が置かれてホコリが積もったり、お中元やお歳暮置き場になったりしている日本の家庭にありがちな床の間より気合いが入っていて、「床の間のエスプリ」も大事にされていることは疑う余地もない。

 クリスマスや誕生日ともなると、家族・友人に自作盆栽をプレゼントして近親者を次々とジャパンナイズしているロラン君。そんな彼に「日本に帰るけど、お土産なにが良い?」と聞くと、「キンボンの最新号」と言うお返事。「は? キンボンって何?」お答えは「近代盆栽」と言う月刊誌らしい。マニアだ。まあ「週刊女性を買って来て」といきなりフランス人に言われるよりはオドロキは少ないかもしれないが。


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