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「世界のウチ」

居間にあるベツレヘム

2007年11月28日

ペルー・リマ 飯尾響子 クリスマスを楽しみマス

 カトリック国の当地では、聖誕祭の主役はサンタさんでもクリスマスツリーでもなく、幼な子イエスである。だからこの季節、家々の居間を飾るのも、聖家族の人形ひとそろいと決まっている。

写真リャマやオウムに付き添われた聖家族。聖母はアンデス娘らしく、糸つむぎをしている。
写真古都クスコで作られる愛らしい幼な子イエスは、スペインなどにも輸出されている。
写真ガラス製の、高さ10センチのリマ市庁舎。本物そっくりに出来ている。
写真牛ハツの串焼き(ジャガイモとトウガラシソース2種つき)の屋台のミニチュア。

 それは、すやすや眠る赤ちゃん姿のイエスのかたわらに、聖母マリアと聖ヨセフがひざまずき、羊飼いと羊の群れがぐるりを囲み、さらに東方の三賢王が宝物を手に歩み寄る、という聖夜の情景を写したもので、イエス生誕の地にちなんで「ベレン」(ベツレヘムの意)と呼ばれている。

 もともとスペインから伝わった習慣だが、今ではペルーらしさもたっぷり盛り込まれている。聖母はアンデスの村娘の身なりをし、聖ヨセフはアルパカのポンチョを着込み、また動物たちも羊や牛だけでなく、アンデスのリャマや、アマゾンの極彩色のオウムも加わっている、という具合である。

 どこのお宅でも12月はじめにベレンを飾るが、主役の幼な子イエスだけは、24日深夜まで隠しておくことになっている。25日の朝零時になってから、「さあ、イエスさまが生まれましたよ」と、ベレンのまんなかにそっと幼な子を飾り、家族みんなでイエスの誕生を祝うのである。

 ベレンはもちろん、カトリック信仰から生まれた風習だが、小物好きには別の喜びも与えてくれる。ペルーや隣国ボリビアでは、ベレンにぴったりのミニチュア品が無数に作られているので、一年中、ベレン用の小物収集を楽しむことができるのだ。コレクションが充実しすぎて、ついにはクリスマスごとに、家の数部屋をベレンのために明け渡し、数日がかりで飾り付けをするお宅もあるほどである。

 一方で、ベレンのせいで一年苦しむ人もいる。古都クスコの知人宅では、毎年クリスマスが終る1月6日(三賢王がイエスのもとに辿りついた日)に、親族みんながベレンの前に集まり、くじ引きをする習わしだ。それぞれが引いたくじに記されたミニチュア品を、一年かけて幼な子イエスのために探し出し、翌年の同じ日、イエスに贈り物をする三賢王の心持ちで、再びベレンの前に集まろう、という趣旨である。

 とても美しい習わしと思うが、問題はくじの品名にある。犬や自動車なら楽勝だし、アシカやイグアナくらいまでなら、なんとかミニチュアが見つかるだろう。でも中には、「リマ市庁舎」とか「ペルー名物・牛ハツの串焼き屋台」とか、どうしようもない品名も混ざっているのだ。うっかりそれを引いてしまった人は、何カ月も空しく探しまわったあげく、さいごは万策尽きて、やむなく民芸品作家に「リマ市庁舎」や「ペルー名物・牛ハツの串焼き屋台」を特注、新年早々とんだ散財となるわけである。


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