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「世界のウチ」

真面目だけどあくまでキュッチュなクリスマス

2007年12月22日

ベトナム・松野泰子 クリスマスを楽しみマス

 人口約8400万人の1割近くがキリスト教徒だというベトナム。どんな田舎町にもたいてい教会があり、もちろんホーチミン市の中心地にある観光名所「聖母マリア教会」も、れっきとした現役の教会だ。昨今の経済発展に伴って、まるで日本のように、いや、それ以上にイベント化されているベトナムのクリスマスだが、そんな中、クリスチャンがどのようにクリスマスを楽しんでいるのか気になった私は、2006年のクリスマスを、当時のアパートの大家姉妹(敬虔なカトリック教徒)と一緒に過ごすことにした。

写真12月に入ると街中がイベント会場に変身。デパートにはディスプレイが施され、その前で記念撮影をするのが市民のお約束。
写真ツリーに飾るための酔っぱらいサンタマスコット。ひとりひとり微妙に顔が違う。
写真教会に飾られたベツレヘムの馬小屋模型……なぜか氷山の一角でイエス様が生まれたことなっている?
写真クリスマスディナー用のチキンを焼くクリスチャン女性。クリスマスの雰囲気はほど遠いけれど……ちなみに味付けはもちろんヌクマムで!

 「クリスマスはどんな風に過ごしますか?」との質問に、大家姉妹の答えはこう。

「まず、クリスマスが近づくと、家の中のイエス様の肖像画に飾りを付けて、花を飾る。そしてクリスマスツリーを出してきて、イブの催し物の練習をしにせっせと教会に通う。イブはケーキなんか自分たちで飾り付けて、鶏でも焼こうかしら」

 と聞けば、なんだ、結構普通の過ごし方をするんだな、と思われるかもしれない。だがやはりここはベトナム。その細部にはアジアらしい濃厚な香りが漂っていた。

 まずイエス様の飾り付け。これは教会の飾りにも言えることだが、ショッキングピンクや原色を使った派手なものばかり。きわどいキャバレー看板のようでイエス様もどこか照れ臭そう。

 クリスマスツリーにつける飾りになるサンタのマスコットは、実に……怖い。どう見ても酔っ払っているとしか思えないような赤面サンタがツリーにたくさんぶら下がっている姿は、もっと、怖い。

 さらに大家について近くの教会に行ってみると、イエス様が生まれた馬小屋を模った等身大の模型が置かれていたが、常夏のホーチミン市の人々は雪を見たことがないせいだろうか、イエス様の周りを取り囲むのは、雪というよりロウが溶けたようなおどろおどろしい灰色のカタマリだった。

 そしてイブの夜に作るケーキはこてこてのバタークリームをロールケーキにべったりと塗りたくったもの、ローストチキンは七輪で焼いたベト風焼き鳥だった。

 端から見ると、どうもふざけているとしか思えない、ベトナムクリスチャンのクリスマスだが、本人たちは至って真面目。遠くアメリカなどに移住した家族と心温まるカードの交換などもして、1年を無事に過ごせたことを感謝している風なのである。町では多くの仏教徒がどんちゃん騒ぎをしている一方、あくまで敬虔な気持ちでクリスマスを過ごす家庭もこんなふうに残っている。そして真面目なのにどこかキッチュで笑えてしまう、それこそがベトナムのクリスマスの魅力なのだ。


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