2008年2月9日
湯沸かし器をミニバスタブへ
シャワーの音が響いていた寮の廊下
今回はちょっと変わった湯沸かし器の話をしようと思う。
私は2004年から06年にかけてブルガリアに留学した。当時住んでいた学生寮は経費削減のためか、11月から3月の冬季期間以外はお湯が出なかった。学生寮に入ったのは04年の9月末だったが、11月上旬までお湯が使えなかった。寮の各部屋に湯沸かし器はなく、蛇口をひねればお湯が出るタイプ。最初はお湯が出ないということが信じられず、蛇口の赤い方をしばらく出しっぱなしにしてみたが、一向に出る気配がない。逆なんてこともあるかもしれないと、青い方の蛇口をひねって待ってみたが、やはり出なかった。
とりあえず湯沸かしポットや電気コンロがあれば温かい飲み物は用意できる。しかし、問題はお風呂。お湯が出ないのでシャワーは水になってしまう。冬ではなくても、さすがに水浴びはきついものがある。
では、どうやってお風呂に入ったかというと……。そこには何ともお手軽で使い勝手の良い秘密兵器があった。ブルガリア語で「ヴォドナグレヴァーテル」(湯沸かし器)、もしくは「バルゾヴァル」(急速湯沸かし器)という名の道具だ。やや長めの柄の先に金属コーティングされた電熱線がそのままくるりと2、3重になっている。柄の反対側にはコード。それをコンセントに繋ぎ、水を張ったプラスチック製のミニバスタブに放り込む。夏場で30分弱、冬でも45分ぐらい待てば良いお湯加減になるのだ。スイッチは無いから、コンセントに繋ぐとすぐに電熱線が熱くなる。このとき電熱線部分に触ると、確実に火傷をする。安全性の面から考えて日本で発売されることはないだろうけれど、使い方さえ間違えなければこれほど便利なものはない。大きさも約30センチと軽く、持ち運びにも適している。ちなみに、これを使っていて火傷をしたというブルガリア人を私は聞いたことがない。
この秘密兵器を覚えてから、私はいつでも好きな時間にお風呂に入れるようになった。ブルガリアではどの家庭にも一つはあるもの。大きさも様々で用途によって使い分けることができる。一番小さなものは、コップに入るサイズ。つまり珈琲一杯ならこれで沸かせてしまう。旅行鞄の隙間に忍ばせておくと、旅先の宿でもちょっと一杯温かいものを、という具合だ。
06年は4月からも夕方2時間ほどお湯を出してくれるようになった。その時間になると皆が一斉にシャワーを浴びる音が寮内に響いたのを思い出す。出遅れるとお湯が切れてしまうことがあるので、自分も負けまいと急いでシャワーを浴びた。今思い返せば、それも楽しいブルガリア生活のひとつ。出遅れたときはもちろん秘密兵器を使っていたのは言うまでもない。