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中華鍋にしては深くない!

2008年3月15日

  • 筆者 トルコ・大矢ちはる 未確認絶好物体

写真サチの上で程よく焼けたギョズレメ。ほうれん草入り、マッシュルーム入り、白チーズ入りが出来上がり。写真市場のギョズレメ売り場。生地をつくっているところ。

 トルコのお母さんたちは、一家の実権を握るゴッドマザーである。とくに年配のアンネ(トルコ語でお母さん)は、体型的にも貫禄十分で圧倒されるものがある。そんなお母さんたちの調理道具として活躍しているのが、中華鍋風の大きな鉄鍋「サチ」だ。

 最初に見たときは、取っ手もないこの巨大な鉄のかたまりが武器に見えた(オスマン帝国時代のトルコ軍は、軍楽がかかるだけでもヨーロッパ列強国をふるえあがらせたという)。しかし、一般家庭に盾があるはずもない。れっきとした調理道具だった。

 中華鍋と形は良く似ているが、使い方は反対。深い底をガス台に載せるのではなく、底を裏返しにしてガス台に載せる。サチを使ってよく熱する料理はたったの1種類しかない。トルコ人には絶対はずせない食べ物、ギョズレメを作る。

 ギョズレメの生地は手作りが本格的だが、トルコのマーケットにはちゃんと生地が売られている。日本の餃子の皮を大きくしたようなもので、これに白チーズとパセリ、ひき肉と玉ねぎ、ゆでポテトをつぶして味付けしたもの、あるいはほうれん草と玉ねぎなど、バラエティーに富む具を包んでサチの上で焼く。トルコ版クレープとも言えるこのギョズレメは、人の集まる海辺の広場や繁華街には必ず屋台が出ていて、気軽なスナックとして人気だ。

 生地を手作りする場合はまず、小麦粉に水と少量の塩を加えてパン生地程度の柔らかさにする。良く練った生地をのし板の上で極細のめんぼうで薄くて丸い形にのばし、材料を入れて半円形にしたものをサチの上に載せて焼く。出来合いの生地は、材料を入れてサチの上で焼くだけなので、忙しいときのお助けものだ。

 家庭では、お母さんが生地つくりから奮闘し、家族中で焼くのを手伝いながら、焼けたものからさめないうちにトルコの紅茶、チャイとともに食べる。みんなでワイワイ言いながら、いろんな具のギョズレメを食べるひとときは家族のコミュニケーションを一層深めるのに役立っているようだ。

 トルコの中部にあり世界遺産にも指定されている奇岩群のあるカッパドキアとその周辺では、オーブンを使わない生のパイという意味のチーボレッキと呼ばれている。また、サチは、インドのナンのような薄いパンを焼くのにも使える。

 田舎に行けば行くほどこういった古くからの調理道具が残っている。大都市の核家族家庭では、あまり見かけなくなったこのサチ、これからもすたれずにずっとトルコ人家族の絆のために働いてほしいものだ。

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