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「世界のウチ」

サマーキッチンとキャンニング

2008年05月07日

カナダ・椋本百合子 きちんとキッチン

 夫のおばあさんの若い頃、カナダには「サマーキッチン」という夏専用の台所があったそうだ。普段の台所は家の真ん中にあって、冬には調理用ストーブが家の暖房の役割をかねていた。サマーキッチンは家の端や離れにあって、「キャンニング=canning」するのに使われていた。キャンニングとは野菜や果物を加熱、瓶詰めにして保存することで、ピクルスやジャムでおなじみである。

写真朝食とお茶に欠かせない、手作りのジャム
写真今ではもう必要のなくなった、サマーキッチン

 おばあさんの地下室の棚には、瓶詰めの野菜や果物が天井までぎっしり並んでいたという。トマトや豆類をはじめ、ジャガイモの瓶詰めまであったらしい。キャンニングは野菜や果物を加熱、瓶詰めした後、大きな寸胴鍋で瓶をぐらぐら煮沸してふたを密封するので、夏の暑い日は台所が蒸し風呂になってしまう。煮沸消毒に何日もかかる大仕事だったそうだ。子供が多く、主婦が冬中の保存食品を用意していた時代にキャンニング専用の台所があったのはうなずける。

 キャンニングは今なお盛んだ。夏の終わりにはキャンニング専用の瓶やふた、ジャムを作るためのペクチンなどが、お店の入り口近くの特等席に並ぶ。現代のエアコンのきいたカナダの家ではサマーキッチンは必要なくなった。近年のカナダ女性の就労率は男性とほぼ変わらない。外で仕事を持つ主婦は、毎日の食事の準備に追われ、キャンニングは趣味に近いだろう。家庭菜園で野菜を育て、時間を費やしてキャンニングしても、経済的にはスーパーで買った方が安いと言われる。それでも毎年雪が降り出す前に、ブリーベリージャムやクランベリージェリーの宝石のような色の瓶詰めを眺めてほほえむ女性は、私だけではないだろう。


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