2008年5月10日
裏返すと一目瞭然のテラコッタ素材。裏まで色づけされているものも多い。
素朴だけど華やか。料理をのせるとその魅力が一層増す。
「ポルトガルでは、3歩歩けば遺跡に当たる」と言っても良いほど、古いものがあちらこちらに溢れている。街並み、石畳、お城……。そして家の中にはテラコッタの食器がある。
テラコッタとは植木鉢に使われるあの赤茶色の器のことで、そこに手描きの絵を施した皿や壺はポルトガルの伝統的な食器である。
テラコッタの食器の魅力は、その素朴な風合い。ポルトガルご自慢のオリーブやプリスントハム(生ハム)、茹でたジャガイモをのせると良く似合う。手作りの温かみはポルトガルの情緒そのもの、見ているだけで心が癒される。
しかし、そんな手作りの魅力に喜んでばかりもいられない。なぜならば、古いものを愛するここポルトガルにも、新時代の波はとうの昔にやってきており、家庭のキッチンに食器洗浄器がある家も多い。そして、テラコッタの食器は、食器洗浄器で洗うことが出来ない。これでなかなか繊細なのだ。
海外にある一般的な食器洗浄器は、家族全員の食器から鍋類まで1日分をまとめて洗える大型タイプ。そのおかげで、主婦たちは食事の後のあの面倒な作業から放免されている。夕食のワインでほろ酔いの時には、そのありがたさもピークに達する。しかし、この便利さもテラコッタの食器には用をなさない。長持ちさせたいなら手洗いするしかなく、なんとも面倒な話である。一体なぜ、ポルトガル人はそんな扱いにくい食器をわざわざ使うのだろう。
鳥や魚、花などを描いた素朴な皿には表情がある。ひとつひとつ手作りされる工程が目に浮かび、作り手の温もりが伝わってくる。家族で食卓を囲んだ年月がその風合いに刻まれる。そして何より料理が優しく見える。手作りの食器が愛される理由はちゃんとあるのだ。
ポルトガルのキッチンは「新しい」と「古い」が交じり合った場所。「使いにくいんじゃない?」なんて心配は無用、彼らにとってはこれが今のポルトガル。テラコッタの食器はその象徴と言える。