2008年5月15日
イタリアのガスコンロ。このように電熱とコンビになっているものも多い。シチューなどコトコト煮込むものは電熱、炒め物にはガス、と使い分けられて便利
英国の電熱式コンロ。鉄板の上にお醤油を落としたりすると、加熱と同時に香ばしいにおいがただよう。が、その後の掃除が大変!
スイスの電熱式コンロ。こちらはお醤油を落としても、さっと一拭きできて掃除が楽。加熱しない時は、調理台にもなる。
2つのコンロが2列並んでいる場合、スイッチは、まるでパズルのように示してある。違うところを点けていて、なんか熱いなと思ってから気づくことも!
スイスのキッチンにはガスコンロが必ずあるとは限らない。コンロはあるが、電熱式が多いのだ。ガスは少数派だが、まだまだ健在である。
ガスコンロのほとんどは、自然に着火するタイプではない。左手でスイッチをひねってガスを出し、同時に右手で火花を散らすスイッチを押して点火する。またはマッチやライターなどを使う。その場合、手のすぐ近くで着火するのでおっかなびっくり、慣れていないと一苦労である。ガスが放射状に出てくるので、その勢いでマッチの火が消えてしまうことも。点いていないのに気づかず、ガス漏れとなると一大事だ。
とはいえ、こだわりのガス派の言い分は、何といっても「調理がしやすい」ということ。火を点ければ加熱できて、火を消せば加熱終了という当たり前のことが、ガスならできる。
電熱式コンロは、火力の調節が実に難しい。スイッチをひねったところで、熱くなるのにかなりの時間を要する。鍋いっぱいにお湯を沸かす時など、苦肉の策として、鍋に少量の水を入れて電熱コンロにかけ、同時に電熱式のケトル(やかん)でもお湯を沸かす。ケトルなら早いので、沸いたらすぐにお鍋に熱湯を注ぎ入れるという、一連の作業をすることになる。
その上、仕上げの段階がさらに厄介なのだ。出来たと思って火を止めた(スイッチをひねった)ものの、実際はまだ余熱がある。温度が下がるのに時間がかかるので、調理はそのまま続いている。その事実を忘れていると、必ず焦がす。思い出して鍋をどけても、炎の燃える音などしないので、そこが熱いことを忘れてしまい、何かの拍子につい火傷する。プラスチック製のザルやタッパーをその上において、溶かしてしまったことなど数知れず。我が家の電熱コンロは、熱くなっているなら、スイッチを消した後も、手元の赤ランプがついていて教えてくれる。にもかかわらず、失敗はなくならない。それでも、借りたアパートのコンロが電熱式なら、それに慣れるほかないのだ。
もちろん電熱式コンロのほうがいいという人もいる。彼ら言い分は、「余熱を利用して節約できる」、これに尽きる。スイッチを消してもすぐには冷めないことを逆手にとるのだ。パスタを茹でる時など、パスタを入れて再び沸騰し始めたら、もうその時点でふたをして火を止める。あとはふきこぼれないように気をつけながら、時々かき混ぜるだけでよい。鍋にポットカバーなどをかぶせれば、さらに強力だ。(注・アルデンテになるタイミングを逃すことがあるので、イタリア人にはこのやり方は不評)。
私はこの余熱利用法を習得して以来、頭と体をフルに使って料理するようになった。本日のメニューの中から、最も調理時間の長いものをまず見極める。その下準備を終えて加熱がスタートしたら、次の料理を準備し、鍋に入れて横にスタンバイさせる。最初の鍋がぐらぐらと煮えてきたら、後方のコンロに移動させ、スイッチをひねって加熱を続けながら、先の熱いところにはすぐさま次の鍋をおく。この鍋もぐらぐらとなってきたら、もう余熱で充分なので火は消して、すかさず前の鍋と交換し、加熱を続ける。温度が下がりすぎたと思った時だけスイッチを再びひねる。こんな調子で、たいていは2つのコンロの加熱と、その余熱だけで調理できるようになった。同時に4つとも点けるのは、よほど急いでいる時のみである。
コーヒーを入れる時など、1つだけ点けてそれでおしまいという時は、その後、小鍋に水を入れてそこにおき、お湯を沸かしてお茶を飲んだりしている。スイッチを消した後でも、ふたをしておけば、一人分の熱湯など充分沸かせる。それほど強力な余熱なので、とても見捨てられないのだ。
といっても、ここまで余熱にこだわるのは私が日本人だからであって、ここヨーロッパに住む人たちは、そこまで考えてはいないようだ。せいぜい、「小さい鍋を大きいコンロで温めると、熱がはみ出てもったいない」と思う程度なのである。
さて、どんな家にガスコンロがあり、どこに電熱コンロがあるのか。私の見た限り、ここスイスでは、古い家はガス式のようだ。買い換える際は、ガスもれの心配がなく、掃除も楽な電熱式に変えてしまうという傾向がある。ただ、自分の家を建て、キッチンを好きなようにできるとなると、特に料理好きなこだわり派は、ガスを選ぶことが多い。
もちろん、レストランの厨房はみんな、圧倒的にガス派である。