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キッチンに陣取る大きな鍋の正体

2008年5月17日

  • 筆者 イギリス・ディキンソン恵子 きちんとキッチン

写真キッチンの壁には大小サイズの鍋やフライパンの他、右上に見える大きな鍋プリザーヴィング・パンが飾られている。写真プリザーヴィング・パンで季節にあった保存食を作るのがイギリス流。

 冬に備えるイギリス人家庭のキッチンに必需品だった物がある。それは我が家のキッチンの壁にも飾られている大きな鍋。自宅を購入した時に家と一緒についてきた物の一つである。直径約35センチ、深さ約18センチのたらいのようなこの物体、普通の鍋と思うと大間違い。まず鍋の横に取っ手がひとつ、そしてバケツのような取っ手もついている。その上、1カ所だけ注ぎ口のような形で先がすぼまっている。

 preserving pan(プリザーヴィング・パン)と呼ばれる、自家製のジャムやマーマレードを大量に作る専用鍋だ。夏の間に収穫されるイチゴ、ブラックベリー、ラズベリーなどの自家製保存食を作る。

 口の広い鍋は水分を蒸発させるのにちょうど良く、バケツのような取っ手は持ち歩きしやすい。出来上がったジャムなどを流しやすいように、注ぎ口のようになっているという具合だ。

 ところが今では旬の時期でなくとも、スーパーマーケットで年中ほとんどの野菜や果物は手に入ってしまう。何種類かのフルーツと砂糖などを煮詰めて作るコンサーヴや、いろいろな種類のジャムもスーパーにいけば簡単に手に入る。大量の野菜や果物を買って自家製の保存食を作るよりは、スーパーや農家が出店するマーケットなどで買った方が安上がり。プリザーヴィング・パンは活躍する機会を失い、壁に飾られることになる。

 しかし、スローフードやロハスなライフスタイルの影響からか、最近このプリザーヴィング・パンが復活してきたようだ。有名デパートやキッチン用品店などでもよく見かけるようになった。

 ジャムやコンサーヴだけでなく、果物や野菜、砂糖、酢、香辛料で煮詰めた甘酸っぱいチャツネもこの鍋を使って作ればバッチリ。インド料理にあうチャツネだけでなく、チーズやクラッカーと一緒に食べるような、プラムとスパイスが効いたチャツネはイギリスでも人気がある。自家製ジャムやチャツネを作って、気の利いた贈り物としてあげても喜ばれそうだ。実際、そういった贈り物セットなどもよくある。

 どうやら私も、我が家のキッチンの壁からプリザーヴィング・パンを下ろして、季節にあった保存食を作る時が来たようだ。

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