2008年6月4日
一般的なカウンターのあるキッチン
料理する夫
冷蔵庫をのぞく様子
「えー! 2、3万ドルも違うんですかー!?」
私たちが家を売る際、不動産会社の人から、キッチンを改装した場合の値段を聞いたときの反応だ。ダイニングスペースを少し狭くして、その分、キッチンを広げたところへアイランドを付け加える。そして、大理石か御影石のカウンタートップを新調するだけで、家の売値がどーんとアップするというのだ。
「キッチンは家の中で一番人が集まるところですからね」
なるほど、確かにそうだ。
1日の仕事を終え、家に帰ってくると、夕食の用意もあるからだろうが、とりあえずはキッチンへ行って冷蔵庫をのぞく、という人が多いのではないだろうか。おなかがすいた子供たちも、学校から帰ってきたら、まずキッチンへ直行する。家でゆっくりくつろいでいる週末でも、なんとなく、冷蔵庫やパントリーを開ける。キッチンへ行く回数というのは家の中のどの場所よりも多いようだ。
アメリカでは、友達や家族を自宅に招待して、カジュアルなパーティーを催すことがよくある。ダイニングテーブルで食事をした後、キッチンでデザートを用意しているホストのところへ、なんとなく人が集まる。そして、そのままキッチンカウンターにひじをかけながら、デザートをキッチンで食べてしまう、なんてことも多い。次には、ワインや好みのドリンクを飲んでおしゃべりしているうちに、何かスナックが欲しくなるものだ。ミックスナッツやポテトチップスなどをつまみながら、みんなキッチンにすっかり腰を落ち着けてしまう。
家族の間でも同じことだ。
男性同様に、バリバリ仕事をこなすキャリアウーマン/ママが非常に多いのがアメリカ。忙しいときは、週に70時間近く働くという女性たちでも、家庭を維持し、子供も2、3人いる人が多い。ただ、家族全員がそろっての食事は珍しくなり、日常の会話も少なくなってしまいがち。しかし、キッチンへ行く回数は少なくならない。キャリアウーマン/ママが、冷蔵庫をのぞいているときに、にきび面の息子がスナックを探してキッチンへやってくる。昨日言い忘れていたことを話し合う良いチャンスだ。話している間に、ティーンエイジャーの娘が、甘いお菓子を探してキッチンに現れて話に加わると、会話はいろいろな方向へ飛ぶ。日頃、何を聞いてもはっきり答えない子供たちの口が軽やかになり、いろいろなことを知りあうことができる。なんとなく、キッチンは気持ちをリラックスしてくれるようだ。
アメリカでは、高校卒業と同時に家を出て、自立する子供たちが多い。食費を浮かすために自然と自炊するようになるので、彼らは男性といえども、料理をこなす。結婚後も日常的にキッチンに立ち、はじめは楽しく料理を一緒にする夫婦も、味付けの際に意見が分かれ、ケンカに発展することがある。しかし、キッチンでケンカがあれば、もちろんキッチンで仲直りもある。誰でもおいしいものを食べると、気持ちが治まるものだ。
キッチンで会話し、キッチンで笑い、キッチンで怒り、また笑う。キッチンは家の中で一番大切な部分なのだ。いや、待てよ。キッチンで会話しながら食べ、キッチンで笑いながら食べ、キッチンで怒りながら食べる、というほうが、肥満大国のアメリカらしいかもしれない。