2008年7月5日
いろいろなオーニングで彩られた集合住宅
オーニングを張り出せば歩道もカフェの一部
自宅でも避暑地のような雰囲気を与えてくれるオーニング
青空に映えるオーニングを眺めるだけでも休暇気分?
北海道と同じような爽やかな夏が続くドイツは、少し大げさに言うと国全体が避暑地のようなところである。だからこの国では涼しさを求めてどこかへ避暑に行くというよりも、むしろ太陽へ向かって南へ移動する人が少なくない。そんなドイツでも南欧の避暑地に来ているかのような気分を何となく感じられる瞬間がある。それは夏になると街角のカフェや集合住宅のバルコニーで見かける色とりどりの「オーニング」がつくり出す鮮やかな色彩と深い影に包まれたときだ。
オーニングとは、建物の入口や窓の上部に設けた可動式の庇(ひさし)のこと。壁から張り出す長さに応じて日射しや雨を適度に調整できるのが特徴だ。このオーニングを広げるだけで、そこにはほどよい日陰と憩いの空間が生まれるから、戸外で一休みするのが大好きな欧州の人には古くから親しまれている。最近では日本でも洒落たカフェテラスなどで見かけることも多くなった。また暑さ対策としての日よけの効果が再認識されてきているから、日本の住宅などでも少しずつ普及し始めてきているようだ。しかし、どちらかというと店舗や商業施設に設置されていることが多く、一般のアパートやマンションで見かけることはまだ少ないように思う。
日本にいたときには、それほど意識することもなかったオーニングだが、ドイツでは住宅や集合住宅に用いられていることも多く、数年前まで住んでいた家のバルコニーにも鮮やかな黄色いオーニングがついていた。初めてそれを何気なく太陽にかざしてみると、バルコニーだけでなく部屋の中まで黄色くなった。遠い南国へ避暑に来ている錯覚さえ感じられるほどの強烈な印象と雰囲気を与えてくれたので、それ以来、私は夏の太陽を浴びたオーニングを見るのが好きな日よけオタクになった。
オーニングは何もドイツだけで用いられているわけではないし、どの国でも見かける比較的ありふれた日よけに違いない。でも大きく開いたオーニングや大型の日傘がつくる艶やかな色彩と濃い夏影は避暑地に欠かせない光景の一つ。気候の良い時期になると決まって現れる日よけを見るたびに、私は避暑のような雰囲気から得られる涼しさや季節感がとても大切に感じられるようになった。そして自宅が避暑地になれるのなら、それが一番のぜいたくなのかもしれないと最近は思っている。