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カラフルなドアたちの真実

2008年9月27日

  • 筆者 アイルランド・小島瑞生 笑える話、困った話

写真友人宅は“白いドア”が目印。どの家かはもちろん一目瞭然!写真弁護士事務所の連なる建物にも、色とりどりのドアたちが。写真家の壁をつたう緑のツタと真っ赤なドアのコントラストが、どことなくアイルランドらしい雰囲気を醸し出している。

 アイルランドの首都ダブリンの街を散策すれば、ジョージアン・スタイルと呼ばれる建物を多く目にする。これはイギリス統治下時代にあった18世紀の建築様式で、特徴的なのはそのカラフルで個性溢れるドアたち。赤やら黄色、青、黒、緑――と実に鮮やかにペイントされている。

 そのジョージアン様式風ドアが地方にも飛び火をしているのか、我が家の周りの家々のドアも色鮮やかなものが多い。景観的に見てもアイルランドらしいイメージで似合っているが、それだけではなく「目印」としても役立つ。この間、友人の家を初めて訪れることになった時に「うちの家は白いドアだよ」と教えられ、実際すぐに見つけることができた。

 しかし、こういった派手なドアを見ていて不思議に思ったことがある。ダブリンのジョージアン様式のドアは、なぜカラフルなのか。この謎は解けそうでなかなか解けなかった。それはアイリッシュの知人たちも知らなかったからである。その代わり、都市伝説的な話は多く耳にした。

 例えばある友人は「アイルランドって天気がいつも悪いでしょ、灰色のどんよりとした空で。だから家のドアを明るい色で塗って、気分も明るくしたのよ」と言い、また近所に住むタクシーの運転手は「そりゃもちろん家に帰りやすいようにだよ。パブで飲みすぎて酔っ払っても、どの家が自分の家か分かるだろ?」ともっともな(?)理由を挙げる。その他にも、イギリス植民地であった時代、家のドアをすべて黒に統一するよう女王に命令されたアイルランド人たちが、反抗するためわざと色んな色でドアを塗った、なんて話もあった。

 そこで、ダブリンのジョージアン様式の建物に詳しい知人のエムリンに尋ねることにした。この国の古い建築などの保存を専門とする「アイリッシュ・ジョージアン協会」に所属する彼女だ、真実を知っているに違いない。数々の噂の中に事実が紛れているかもしれない、という期待もあった。果たして彼女によれば、ドアがカラフルになっていったのは、ペンキが大量に安く作られるようになった1970年代頃からだと言う。当時アイルランドでは、建物の統制に関するまともな法律がまだなかったこともあり、皆が自由に思い思いの色でドアを塗ってしまったのが始まりだとか。

 こうして意外にも“平凡”な真実が明かされたわけだが、今まで一人歩きしていた伝説が事実だったら面白かったのに……と思ってしまった私は勝手だろうか。

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