現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 住まい
  4. 世界のウチ
  5. 記事

使わない暖炉のためにリノベーション?

2009年6月6日

  • 筆者 ギリシャ・有馬めぐむ わが家のChange

写真使われなくなった暖炉の中にはいつも和紙を使ったランプとキャンドルが置かれている。写真テレビコーナーと化している暖炉。前には人形が飾られ、どう見ても長年使われていない。

 ギリシャのリノベーションの最近の傾向は、3DKの部屋を2LDKにするように、仕切られていた空間をひとつの大きな空間にするのが最も多いパターン。夫が建設会社を経営しているため、リノベーションの物件をよく見学するが、大半がキッチン、ダイニングルーム、リビングルームと分かれた部屋の壁を取り払って、突き抜けた空間にするものだ。

 そして同時に見られる顕著な傾向、それは大半の建築主が「ぜひ暖炉を設置したい!」と言い出すことである。確かに暖炉のある部屋は魅力的だが、南欧のギリシャ、特にアテネは年中気候がよいし、建物にはセントラルヒーティングが設置されているので暖炉の必要性は感じない。また暖炉設置工事は煙突の関係で集合住宅では不可能な場合も多いし、可能でもなかなか大変なので、オーダーされた方はうんざり。が……、まあお客様の希望を無下に却下することもできないので、引き受けることになる。

 試行錯誤の末、完成すると建築主は大喜び。夫の友人のレオニダスとカテリーナ夫婦も完成した暖炉の前で有頂天だった。きっと初めて暖炉を使い、ゆらめく炎を楽しんだ際はとても満ち足りた時間を過ごしたことだろう。

 しかし苦労して設置された暖炉の大半は徐々に使われることはなくなっていく……。まず暖炉を使おうと思ったら薪が要るが、アテネのような大都市周辺では高価な買い物だ。置いておくスペースも確保しなければならない。しばらく経って訪れた夫妻の家。案の定、暖炉は使われていない……。「暖炉の掃除、灰の処理は大変な仕事なんだよ。ホントに疲れるったら」と愚痴をこぼすレオニダス。「灰やススは思いのほか部屋中に飛び散るの。壁や天井はいくら掃除をしても少しずつ黒くなっていくのよ」と声を荒げるカテリーナ。

 周囲のギリシャ人夫婦は過剰にきれい好きが多く、友人知人宅はちりひとつなく磨きたてられている家が多い。ミドルクラス以上の共稼ぎであれば、家政婦を雇ってしっかり掃除をさせる家庭が大半。私は他の外国で暮らした経験もあるが、「日本人はきれい好きね」と言われることはあっても「散らかす」と言われたことはない。しかし、ギリシャではちょっと何かを置きっぱなしにすると家族に怒られるくらいで、ギリシャ人は整理整頓も徹底する傾向がある。カテリーナにとってもどんどん部屋が汚れていくことなぞ、とうてい耐えられないようだ。あれほど暖炉を欲しがっていたのに、さっぱり使わなくなってしまった。

 ゆらめく炎の代わりに暖炉の中に見られるようになるのは和紙を使ったランプや電気ストーブ。「なかなか素敵でしょう」とカテリーナ。だったら煙突をつくらないで、フェイクの暖炉でいいのに…。「いつもそれを勧めるけど絶対に建築主は納得しないんだ」と夫。

 他のヨーロッパの国々のようにとても寒ければ使いたいと強く思うのだろうが、冬が短い上にセントラルヒーティングだけで十分暖かいので、必要性を感じないのも大きな理由だ。使われない暖炉とバルコニーに放置された薪。何度この光景を目にしたことだろうか。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

提携サイトで探す

  • 全国の売買物件をお探しの方
  • 全国の賃貸物件をお探しの方
  • 不動産を売却したい方
  • 不動産会社をお探しの方