2009年11月25日
これだけ奥行きがあるのに、建物の側面には小窓一つない。室内はさぞや暗いだろうと心配したが…
ドゥクトの中は光がいっぱい!
ドゥクトの壁を格子にして、さらに採光をよくしたアパートもある
ペルーでは通常道路に面していない限り、家やアパートの側面に窓を設けてはいけないことになっている。プライバシーの確保という点からは理にかなっているが、ペルーには奥行きの深いウナギの寝床のようなアパートが多く、他人のウチながらどうも採光の具合が気になっていた。この国に来た当初は小窓一つない外壁を見て、「一体どれほど暗い家に住んでいるのか」と住人の感覚を疑ったものだ。
しかし、そうした建物の内側にもたくさんの光があふれていることを、知人宅で知ることができた。採光のため、多くのアパートには「ドゥクト」と呼ばれる吹き抜けスペースが設けられているのだ。日本で言う換気や配管スペースとして利用されるダクトではなく、空を仰ぐことができる十分な面積の吹き抜け。この「空中パティオ」とでも言うべきドゥクトのお陰で、奥行きのあるアパートでも自然の光を取り入れることが可能となっている。
南北に長い我が家の敷地のど真ん中にも、もちろんドゥクトがある。その広さなんと約6畳、まるまる一部屋分の大きさだ。当初はなんともったいない間取りにするのかと思ったが、ドゥクトのお陰で表通りに面しているリビングだけでなく、書斎やバスルーム、洗濯場、メイド部屋、メイド用バスルームと家中すべての部屋に窓のある構造になっており、とても明るい。また風通しもよく快適だ。今では奥行きのあるアパートを見ると、「あそこはドゥクトをどう配置しているのだろう?」と、壁の内側を想像してしまう。
ドゥクトの唯一の欠点といえば、光や風だけでなく音や声もよく通すことだろうか。吹き抜けの内壁に音が反響するためか、小さな話し声も明瞭に聞こえてしまうのだ。多少うるさいと思うこともあるが、1階に住むおばあちゃんの声が聞こえてくると、「今日も元気そうだ」となんとなく安心するし、下階の住人と会釈を交わすこともある。
ドゥクトは採光と換気だけでなく、住民同士の風通しさえよくしてしまうペルーでは大切な間取りのひとつだ。