2010年7月14日
大きな三角屋根と妻側の全面がガラスで覆われた開放的な住宅
派手な照明が埋め込まれた階段
厚さ30cmの断熱材が施された外壁の断面模型
洗い場のないシャレた浴室
住宅や建築に対する関心が高いといわれるドイツには、大きな住宅展示場が全国に4か所ある。逆にいうと、日本とほぼ同じ面積の国土の中に、わずか四つしかない。これらの展示場は、いずれも同じ組織が運営しているのだが、日本全国には住宅展示場と呼べる施設が200カ所以上あることを考えると、その数はあまりにも少ない。
ドイツの住宅展示場が日本と大きく違うのは、入場料が必要なことだろう。その額は大人が3ユーロだから340円程度。6歳以上の子供や学生は半額だ。それほど高くはないものの、住宅展示場に入るために、お金を払うことなどは日本では考えられない。しっかり払ってじっくり見るというのは、いかにもドイツらしい。
有料展示場の一つである、ヴッパータルという街の郊外にある住宅展示場に入ってみよう。ここには約50棟の家が建っている。外観の特徴の一つは、傾きのある大きな三角屋根だ。中には屋根の傾斜がほとんどない住宅もあるが、大抵の住宅が深い軒を持つ三角屋根を基本にしつつ、現代的なデザインがうまく融合されている。
内開きの玄関に入ると、段差がない。靴を履いたまま見学だ。しかも、どの家に入っても丁寧な出迎えなどない。案内の人がいても簡単なあいさつだけで、基本的には勝手に入って自由に見て回る仕組みだ。誰もいないように見えても、事務室として使われている部屋が必ずあるので、居心地がよいからといって、寝っころがったりできない。くつろぎ過ぎは禁物だ。
各棟の展示で良く見かけるのは、実物大の壁の断面模型。壁の構造や断熱材の厚さなどが一目でわかる工夫がなされている。ドイツでは地震がほとんど起きないとはいえ、最低でも100年は持つであろう頑丈なまでの構造と、暖房の熱を逃がさない分厚い断熱材はドイツの住宅の要の一つなのだ。
それから浴室は、2階に配置されている例がほとんど。寝室や子供部屋の近くに洗面所や浴室を配置するというのはとても合理的だ。しかも日本のように洗い場がないので、床の防水が不要というのもうらやましい。そして、趣味の部屋や物置としての役割を持つ大きな地下室も魅力的だ。ドイツの住宅は、頑丈で暖かくて合理的なのだ。
ドイツの古い街並みを体験したら、一度、住宅展示場を訪ねてみよう。意外な観光スポットといえるかもしれない。わずかな入場料を払うだけで、ドイツ人の住まいへのこだわりが見えてくるに違いない。