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「世界のウチ」

四季を楽しむ展望キッチン

2010年10月14日

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写真:窓辺に並べた照明に浮かび上がる幅の狭い展望キッチン窓辺に並べた照明に浮かび上がる幅の狭い展望キッチン

写真:春の柔らかな日射しを受けて輝く中庭に面した集合住宅春の柔らかな日射しを受けて輝く中庭に面した集合住宅

写真:暮れゆく夏の太陽に赤く照らし出された夕暮れ雲暮れゆく夏の太陽に赤く照らし出された夕暮れ雲

写真:灰色の天候が続く冬空と雪の積もる屋根越しに見えるケルン大聖堂灰色の天候が続く冬空と雪の積もる屋根越しに見えるケルン大聖堂

 通りに面した幅が、7〜8m程度の細長い集合住宅は、ケルンで見られる典型的な都市型の住居である。一階には共用玄関と窓が二つあるが、二階から上は窓が三つ並んでいることが多いので、「三つ窓住宅」と呼ばれている。

 家の幅が狭いから、大抵の場合、各階には1軒しかない。私も縦に5軒が並ぶ典型的な三つ窓住宅の住人で、その最上階に住んでいる。ここは屋根裏だから下の階とは違って幅のある開放的な窓が特徴だ。しかも天窓があるからとても明るく、頭上にある天井の低いロフトの穴ぐら的な雰囲気も気に入っている。

 そんな屋根裏住居の中に、私が特等席だと感じられる場所がある。それは北側のキッチンだ。実際には「流し台」と言い換えた方が良いくらいの設備しかないのだが、最上階特有の広い空が見渡せる窓があるので、空間的には小さいのに狭さを感じることもない。

 ここからは反対側の家の屋根越しに、遠く離れたケルン大聖堂の先端が少しだけ見える。しかも集合住宅で囲まれた中庭も見渡せるから、晴れた日には青い空と太陽に照らし出された近隣の古い建物を見ながら料理を楽しめるぜいたくな場所なのである。

 天気が良い朝に窓を開け、そこから身を乗り出し、入れたての紅茶を飲む。反対側に住む人たちも同じように窓を開けて、新鮮な外気を入れているお宅もあれば、窓辺に洗濯物を干している人もいる。

 あるいはどこからか、食器が重なる音や、子供たちの声が聞こえて来る。夏の夕暮れになれば、テラスで涼む人もいるし、日曜の遅い朝には、バルコニーでゆったりと食事を楽しむ姿が見える。狭いキッチンの一角には座ることはできないけれど、ここは日々の移ろいが感じられる特等席といって良いだろう。

 夏至が近づくにつれて日が長くなると、夜の空が次第に深みのある濃い青色へと変わって行く。秋の長雨の時期になれば、北から降って来る雨が窓をつたう。重く垂れ込めた灰色の雲が、ゆっくりと流れて行く冬の中庭には静寂が訪れ、カーニバルの時期にはあいさつ代わりに叫び合う「アラーフ」という合言葉がこだまする。

 青空が戻る春には、窓辺に花が飾られ、テラスやバルコニーにある鉢植えの手入れを始める人が増える。そういった光景が見渡せる展望キッチンにいると、精神的な豊かさをもたらしてくれる感じさえする。幅の狭い小さな住まいだけれど、そんな場所があるというのは、きっと幸せなことに違いない。

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