現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 住まい
  4. 世界のウチ
  5. 記事

「世界のウチ」

ブリスベン大洪水被災リポート(6)そして停電生活が始まった

2011年4月18日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:家の内壁。何かがぶつかったのか穴が開いていた拡大家の内壁。何かがぶつかったのか穴が開いていた

写真:使えなくなって捨てたもの。これでも「第一弾」に過ぎない拡大使えなくなって捨てたもの。これでも「第一弾」に過ぎない

 1月15日土曜日から停電およびガスと温水のない生活が始まった。幸い水道水は出るし、夏だ。冷たいシャワーでもなんとかなる。夜になると、ろうそくとランタンをつけた。外は真っ暗だ。電気がついている家は見渡す限り、どこにもない。

 一日中作業しているので疲労困憊。夜8時前に床についたのだが、午前2時に目が覚めた。たぶん神経が高ぶっているのだろう。

 街灯もないのに、外は意外と明るかった。満月から少し欠けただけの月だった。「これなら外も歩けそうだ」と感じた。実際、昔の人はそうしていたはずだ。

 失くして得ることもある。不自由してわかることもある。たとえば夜は暗いということ。でも、月明かりは思ったよりも明るいということ。お湯のシャワーはあたたかいこと。手に持ったろうそくの火は、けつまづいただけで消えてしまうこと。そのろうそくの火もランタンの灯りも、下のほうはあまり照らしてくれず、パソコンや書き物に不便なこと。

 この日から、真夜中とか未明に、その日あったことや思ったことを書き記すのが日課になった。このリポートも、それがもとになっている。最初は知り合いの編集者や親兄弟・知人などに現状を知らせたり、仕事が滞りがちになる理由を伝えたりするのが目的だった。ただ、そのうちに書くことで自分が癒やされ、勇気を得られることに気づいた。昼間は朝5時か6時から夕方6時ごろまで、毎日毎日延々と作業が続く。南半球は夏とはいえ、水洗いをしていると冷えて体力が奪われる。水を含んで重くなったものをただ捨てるために運ぶのもつらい。そのまま寝てまた起きるだけの日々だと、ただただつらいだけの毎日になる。今でも、そんな想い出しか残っていなかったかもしれない。

 ところが未明に起きて前の日にあったことを記していくと、意外とすてきなことにあふれていた日々だということに気づく。見ず知らずのボランティアのみなさんのあたたかさ。「ウチは被災しなかったので熱いシャワーを浴びに来てね」と言ってくれた仲間や、食事と冷たい缶ビールを1ケースも持って陣中見舞いに来てくれた友人のありがたさ。そんなことを書いていくと、勇気が湧いてくる。明日も頑張れる気になってくる。今、「被災体験からも得るものがいっぱいある」とみなさんに伝えられるのも、きちんとメモを取っていたからだ。

 ということで、みなさん。万が一、何らかの形で被災したら、ぜひメモなり日記なりを書き続けることをお勧めしたい。それが、精神安定剤の役割もする。

 ただ一つ、執筆で注意しないといけないことがある。停電中の街で真夜中、懐中電灯をつけて家の中を歩いていると非常に目立つということだ。目立つだけならいいが……。

 ある晩、突然サイレンが聞こえ、パトカーがわが家の前に停まった。警官が2人出てきて、最初は前の家に入っていった。何があったのだろう。気になって二階の窓から見ていたら、警官たちがこちらにやってきて、いきなり懐中電灯で私の顔を照らした。

 「ここに住んでいる人ですか」

 「はい」

 「ちょっと降りてきてくれますか」

 一階から、外に出る。前の家の人が出てきて、「お宅の中を、懐中電灯を照らして歩いている人がいたので、泥棒かと思って通報した。お宅の駐車場に車が見当たらず、出かけていると思ったので」と言う。「いや、まだ片づけ作業が終わっていないので、路上駐車しているんです」と答えて、持っていった懐中電灯で車を照らして見せた。

 「ああ、そうだったのか」と納得してもらったが、警官からは職務質問を受け、名前と生年月日と電話番号を確認のために聞かれた。ただでさえ被災地の警備などでお忙しい警察の方々にご迷惑をかけてしまった。今度からは外に光が漏れないようにしようと、ひたすら反省した。だが、この翌日には街灯がともった。

 停電中、夜は食事をしたら、話すくらいしかすることがない。

 「こうやって家族みんなでおしゃべりするのもいいよね」

 長男も次男も長女も、そんなことを言ってくれる。この子たちがいてくれるから、復興に向けてがんばれるのだと改めて感じた。家族がいなかったら、折れてしまっていたかもしれない。

検索フォーム

世界のウチ バックナンバー


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介

提携サイトで探す

  • 全国の売買物件をお探しの方アットホームスーモ
  • 全国の賃貸物件をお探しの方アットホームスーモ
  • 不動産会社をお探しの方アットホームスーモ

あなたの希望に沿った不動産情報・マンション情報を検索!

カテゴリ
都道府県

あなたの希望に沿った不動産情報・マンション情報を検索!