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「世界のウチ」

ブリスベン大洪水被災リポート(8)お風呂に入るぞ大作戦

2011年4月23日

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写真:これが「一寸法師の舟」。プールサイドにおいて、水から出た後に入るとそれなりに温かいが、お風呂のお湯までにはならなかった拡大これが「一寸法師の舟」。プールサイドにおいて、水から出た後に入るとそれなりに温かいが、お風呂のお湯までにはならなかった

写真:レジ袋を並べたところ。理論上はこれが100くらいあれば快適な風呂に入れるはず。ただし、日没のかなり前に回収しないと冷めてしまう拡大レジ袋を並べたところ。理論上はこれが100くらいあれば快適な風呂に入れるはず。ただし、日没のかなり前に回収しないと冷めてしまう

 1月23日。被災した自宅に戻ってから9日目。とうとうわが家にも電気が通った。通りには5日ほど前に電気が来ていたが、電気技師にわが家の状況をチェックしてもらい、浸水したコンセントやブレーカーを交換してもらうのに時間がかかったのだ。

 今までボランティア団体の連絡所まで行って、パソコンや携帯の充電をさせてもらっていたが、もうその必要もない。バッテリーの残量を気にしながらメールを書く必要もない。メールを送るために、ホットスポットになっているファストフード店に行く必要もない。家で普通にメールが打てることが、こんなにうれしいことだとは思わなかった。

 子どもたちは、さっそく夢にまで見た「ホッカホカの白いご飯」を炊飯器で炊いて食べた。「まず一杯目は何もかけずに、ご飯そのもののおいしさを味わう」などと言って。

 妻は冷蔵庫が使えるようになったことを喜んでいた。今までは保冷ケースに、スーパーで買ってきた氷を詰めてモノを冷やしていたが、容量に限りがある。これからはたっぷり冷やせるし、冷凍庫も使える。私は冷蔵庫の片隅にこっそり缶ビールを忍ばせたのは言うまでもない。

 電気も通ったので、その翌日、8日間ずっと夢に見ていたことをとうとう実行に移した。それは「お風呂に入ること」。8日間、毎日シャワーを浴びていたし、そのうち2回は友人の家と近所のプールで熱いお湯のシャワーに入ることができた(妻と子どもたちはほぼ毎日近所のプールに通っていたが、片付けでヘロヘロになっていた私はその気力がなかったのだ)。

 とは言え、やっぱりニッポン人なら、疲れたときは風呂がいちばんなのだ。ところが困ったことに、わが家の給湯システムは電気ではなく、ガス。そしてガスの供給はストップしたままなので、蛇口をひねってもお湯はまだまだ出ない。

 しかし、これしきのことで諦めては風呂好きニッポン人の名がすたる。私は一計を案じた。そうだ、コーヒー用などのお湯を沸かす電気ケトルを使えばいい! 一回に沸かせる量は1.8リットル。バスタブに通常にお湯をはると200リットルくらいだろうが、ぜいたくは言えない。180リットルもあれば十分だろう。

 さらに言えば180リットルすべてを熱湯にする必要もない。そんなことをすれば、私はダチョウ倶楽部になってしまう。90リットルくらいのお湯を沸かして、水を90リットルくらい入れれば、途中でお湯がさめることも考慮に入れれば、それでちょうど40度前後になるはず。1.8リットルの電気ケトルで50回沸かせばいいだけ。……と、計算上では、こうなった。

 ところが……。まったくの常温の水1.8リットルを電気ケトルで沸かすのは、たとえ電圧240ボルトのオーストラリアでも時間がかかるのだ、これが。君の瞳のように一万ボルトくらいあると、瞬間的に湧くのだろうが、240ボルト程度だと、たぶん3分くらいかかる。ということで、30分間ほどでできたお湯は18リットルほど。そのお湯も時間が経ってどんどん冷めるので、水もほとんど加えられない。

 結局、ためられたのは20リットルほど。バスタブの10分の1! これが私の8日ぶりの風呂だった。足湯というよりも、脚湯(ただし下半分)といった風情。もののあはれ、というよりは、モロに哀れ、な感じだ。

 しかし、そんなことでへこたれては風呂好きニッポン人の名がすたる。ということで、その後、さまざまな試行錯誤を繰り返した。

 電気ケトルと並行して、ボンベ式のガスコンロでもお湯を沸かすのも一つの手。だが、一度に沸かせる量は多かったが、コンロの火力は限られているので時間がかかった。

 わが家の庭には、直径1メートル近くある、プラスチック製のおわん状のものが転がっている。以前ここに住んでいた人が庭に埋めて、小さな池をつくっていたのだが、風情よりも遊び重視の私たちは掘り起こし、プールに浮かべて「一寸法師の舟」と称して使っていたものだ。これに水をためて、太陽熱で温めればどうだろう? ……おそろしくナイスな案に思えたが、じっさいは夕方になるとかなり放熱してしまう。また、上のほうはそのまま風呂に入れたら熱すぎるくらいになるが、下のほうは冷たく、全体として「ぬるま湯」程度にしかならなかった。

 そこで、私は考えた。放熱しないようにして、下のほうがないようにすれば、「熱い湯」が得られる。そのためにはどうしたらいいだろう。

 結論は「ポリ袋にお湯を入れて、地面に広げておく」というもの。これは見事に「お湯」ができた! ただし、家の清掃ですでにたくさん使ったので、わが家にはあまり多くのポリ袋がなかった。それと、色は黒いほうが熱を吸収するが、ゴミ出し用の大きな袋ではあまり多くの水を入れると破れてしまう。レジ袋に2リットルくらい水を入れるのが、後でそのまま持ち運べるので便利だが、色が薄いのでそれほど高温にはならない。それと破れているものも意外と多い。ということで、「どこからか黒くて、レジ袋くらい小さくて、もっと破れにくい袋を100枚くらい調達して、それぞれ2リットルくらい水を入れて、天日で温める」という完璧なソーラーパワーシステムを思いついたのだが、実行する前にガスが通ってしまった。うれしいのだが、なんだか残念でもある。

 ちなみに私は阪神・淡路大震災にも被災してガスのない生活をしばらくしたのだが、そのときには「熱帯魚用の水槽を温める器具」2本を知人が提供してくれて、それでお風呂に入った。朝、水を張った湯船に入れておくと、9時間後くらいには入浴できる温度になるのである。

 まあ、とにかく。お風呂はニッポン人の心のふるさと。たとえば学校の体育館などの避難所で長く過ごす人たちを、バスなどで銭湯に連れて行ったら、きっと喜ばれるだろう(すでにされていたらごめんなさい)。それが不可能な場合、足湯でも15分ほど入るだけでかなり体がぽかぽかしてくる。ただし常時お湯を継ぎ足すことをお忘れなく。

 そう言えば、阪神・淡路大震災に被災してから3日後、家族全員で妻の実家に避難したが、そこでまずしたのがスーパー銭湯に行くことだった。

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