2012年1月7日
最近の日本では、スーパーやコンビニでお総菜を買って済ませる、という家庭も増えてきたとはいえ、食料品はまとめて買って冷蔵庫に保存しておく、というのが王道である。
しかし、ここボリビアでは、食料品の調達方法は少し異なる。「必要なものは必要な分だけ必要なときに」がモットーである。肉や野菜などの生鮮食品だけでなく、お米や調味料に至るまで、その日に必要な分だけを購入する。なるほど、町の至る所に、自分の家の一角を売り場にした小売店が存在するわけだ。
このシステムだと、どんなことが生じるか想像していただけるだろうか。
今日は、フローレスさん一家からお昼ご飯に招待されている。「12時には来てね」、と奥さんが言っていたので、時間通りに到着。「何か手伝うことありますか」、と念のため聞いてみる。
「心配しないで。今のところなにもすることはないから」。おや、もう準備は整っているのか? いや、待てよ、「今のところ……?」少し気になる。
「ご主人はもう到着されたんですか」
「もう着くはずなんだけれど。そうじゃないと鶏肉を焼けないから困ったわね」
何? 鳥をまだ焼いていない? 今日のメニューは鳥のオーブン焼きと言っていた。台所を見ると、確かにご飯は炊き上がっているが、オーブンの中は空っぽ。ご主人がお昼ごはんを食べに家に帰る途中で、市場に寄る約束になっているらしい。ボリビアでは、お昼休みに家に戻って食事をする人が多い。そうか、今日の昼に必要な鶏肉はその日の昼に調達するのか。確かに、「必要なものは必要な分だけ必要なときに」の原則に従っている。
そこへご主人が到着。早速、鶏肉がオーブンに放り込まれる。待つこと少々……とはお世辞にも言えず、かなり。時計を見ると、既に午後2時を過ぎている。奥さんの「できたわよ」の一言を合図に食卓へ。食べ始めて早々申し訳ないが、一応気にかかっていたことを聞いてみた。
「ところでフローレスさん。午後からの仕事は何時開始なんですか」
「あっ、ぼちぼち行かないと。お客さんがスーツを取りにくることになってるんだ」
仕立屋の彼の仕事再開時間は既にまわっているようだ。
ここボリビアでは、大抵の店は午後2時半から再び店を開けることになっているが、時間通りに開く店をあまり見たことがない。その理由を深く考えたことはなかったが、やっと頭の中でつながった。きっと、各家庭では毎日同じことが起きているのだろう。ところで、2時半にスーツを取りに来ることになっていたお客さんは怒っていないだろうか。きっと大丈夫。彼も今お昼ごはんを終えたところだから。