スペイン人が並々ならぬ情熱を注ぐ家事は、アイロンがけとモップがけ。掃除機がない家庭はあってもモップがないことはまずない。家の中はもちろん、家の前の道路もモップで拭き掃除をする。
そんなスペイン女性たちを大いに助けているのが、「モップ絞り器付きバケツ」。ペダルなど凝ったものは一切なし。バケツの一部分にプラスチックの丸いかごがついたもの。汚れたモップはバケツに突っ込んで水でざぶざぶ洗った後、クルっと丸めてこのかごに入れ、ぐっと押し付けて水をきるという仕組み。全てモップの柄を持って、立ったままでできるので、屈んで手で絞らなければならなかったことを思えば、かなりの労働が軽減されたことになる。
実はこのモップ用バケツ、1950年代にスペイン人が国際特許を取った自慢の発明品なのだ。発明者は、マヌエル・ハロン・コロミーナスという空軍のエンジニア。エンジニアの勉強を終えてからフィンランドやフランス、アメリカでインターンをしたことが後に彼の職業と運命を変えたのである。アメリカで航空機の格納庫を掃除した際に、当時スペインにはまだなかったモップに出会った。当時のモップは雑巾に柄がついたようなもので、拭いては手洗いし、拭いては手洗いし、という繰り返しだったそうだ。
スペインに戻ったある日、仕事仲間とバルで飲みながら、航空機の整備のための道具を開発する話をしていたところ、その友人がバルの奥で膝をついて床を拭く女性を指して、「そんな整備品なんかより、女性たちが立ったまま掃除できる道具を作ったほうが売れるに決まってるよ」と言ったとか。その時アメリカ風モップを思い出し、バルを出るころにはモップ生産を仕事にすると決めたそうである。
そうしてアメリカで見たものよりフレキシブルで使いやすいスペイン風モップを研究すると同時に、この絞り器付きバケツも生み出し、1957年にRODEXという会社を設立、ヨーロッパ30カ国に輸出するモップ大旋風を巻き起こした。立ったり屈んだりせず、手も一切汚さずに楽々掃除ができるモップと絞り器付きバケツに、世の女性たちは大喜びしたそうだ。今ではモップ用バケツがスペイン 人の発明品だということはスペイン人誰もが知っており秘かな誇りでもある。www.fregona.comなんていうモップの歴史が詰まったホーム ページまであるくらい。スペインの主婦たちが、どんなに忙しくても家のモップがけだけは欠かさないのは、絞り器付きバケツのおかげかもしれない。